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M&Aニュース

                                               2009年11月09日
 



海外子会社配当の5%分 個別決算の税効果では
   将来課税所得に
           
 

  連結決算上は将来加算一時差異としてスケジューリング




 21年度税制改正で「海外子会社からの配当の益金不算入制度」が創設されたことにより、一定の要件の下、海外子会社から日本の親会社が配当を受ける場合にはその配当の5%を益金算入、95%を不算入とするとされた(法法23の2、法令22の3)。また、会計面でも連結財務諸表の税効果実務指針等が見直され、21年度改正税法公布日の21年3月31日の属する期(3月決算法人なら21年3月期、2月決算法人なら22年2月期)において、今後も益金算入する5%分等を除き、基本的には将来の配当金の受領によって解消されると見込まれる将来加算一時差異に係る繰延税金負債を取崩すこととされた。
 とはいえ、先述したように、連結財務諸表上、今後も配当の5%は益金算入となり、海外子会社の留保利益のうち一定額は今後も繰延税金負債としての計上を要するため、実務家の中には、この繰延税金負債のベースとなる配当を「繰延税金資産の回収可能性」のスケジューリングの中で将来課税所得として扱うのか、それとも将来加算一時差異として扱うのか、疑問を持つ向きもあるようだ。
 この点、結論だけいえば、同繰延税金負債のベースとなる配当は、単体(個別)決算上は将来課税所得になり、連結決算上は将来加算一時差異になると考えられるようだが、税効果会計自体が複雑であるため即座に理解できるものでもない。そこで今回は、いくつか考えられるパターンのうちの一つを参考例として、紹介することとする(以下、説明を簡略化するため、別表等は適宜加工したものとなる)。


◆ 前提 繰延税金負債のベースとなる海外留保利益は5


 例えば2月決算法人の親会社A・海外子会社Bの連結グループにおいて、海外子会社Bから日本の親会社Aが配当を受ける配当政策を採用している場合に、22年2月期の当期利益がA・Bともにそれぞれ100であったとする。(B社の留保利益は22年2月期の利益による100のみ。23年2月期の予想利益はAではBからの配当金のみ100、Bはゼロ。その他、B社に係る状況は考慮せず。日本の実効税率は40%。為替相場の変動やタックスヘイブン税制等は考慮せず。他に調整項目等は生じない。)

Aの利益 Bの当期利益
22年2月期 100 100
23年2月期 (予想) 100(B社からの受取配当金相当額) 0(前期から繰越された留保利益100をA社に配当)


 このケースで、22年2月期(当期)の海外子会社Bの当期利益100がその期では丸々留保され、23年2月期(翌期)に親会社Aへ配当される場合、上記表のように23年2月期のAの当期利益は100となることから、23年2月期では次のような別表調整を行う見込みとなる。

  親会社Aの予想ベースの別表四
 (平成23年2月期:一時差異解消の考慮前)
当期利益 100
加算
減算 95
所得金額


 なお、連結決算上は上記の「所得金額5」に税率40%を乗じて、「法人税等調整額2/繰延税金負債2」という連結修正仕訳を行う。つまり、一般的には、親会社A・海外子会社Bそれぞれで税効果の検討を行った上で個別財務諸表を作成するが、この「繰延税金負債2」は連結決算上生じるものなので別途、追加的に連結財務諸表に加えることとなる。


◆ 個別財務諸表(親会社A)22年2月期のスケジューリング


 この前提で、親会社Aにおける22年2月期末の「繰延税金資産の回収可能性」(スケジューリング)を検討する際に、仮に、将来減算一時差異が22年2月期末にあるとする場合(このほか、減算・加算差異は生じない)、次の表のように、この5が23年2月期中に解消されるとするならば、同じ23年2月期末の将来課税所得5(親会社Aの23年2月期の当期利益(予想)は海外子会社Bから得られる100のみなので、海外子会社Bから配当される100の5%分である5が将来課税所得となる)と相殺できることになり、結果、繰延税金資産の回収可能性は有ることとなる、(説明を簡略化するため、スケジューリングの手順や会社区分は考慮しない。)


  親会社Aのスケジューリング表
22年2月期末 23年2月期中
将来減算一時差異 △5
将来加算一時差異
将来課税所得(一時差異解消の考慮前) -
将来課税所得(一時差異解消の考慮後) -
未相殺将来減算(加算)一時差異残高 -



◆ 連結財務諸表 22年2月期のスケジューリング


 一方、連結決算における親会社Aでもスケジューリングを行うこととなるが、ここでは単独決算における親会社Aのスケジューリングとは異なり、将来課税所得が生じない(連結決算上、海外子会社Bから親会社Aへの配当のような内部取引は相殺消去されるので。)また、22年2月末には海外子会社Bから配当を受けることによる将来加算一時差異5が存在している。
 このため、仮に連結決算における親会社Aで22年2月期末に将来減算一時差異が5あり(このほか、、減算・加算差異は生じない)、下表のように、この5が23年2月期中に解消されるとするならば、これを海外子会社Bからの配当金によって解消される将来加算一時差異5と相殺できるので、結果、繰延税金資産の回収可能性は有るということとなる。


  連結決算上のスケジューリング表
22年2月期末 23年2月期中
将来減算一時差異 △5
将来加算一時差異 △5
将来課税所得(一時差異解消の考慮前) -
将来課税所得(一時差異解消の考慮後) -
将来減算一時差異の未相殺残高 - 0




(以上参考;週刊「税務通信」第3088号)
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