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M&Aニュース

                                               2009年11月20日
 




一定の私財提供 
代表者に課税関係は生じない旨の文書回答
           
 

企業再生支援機構の事業再生 代表者に私財提供を求めることも




 地方の中堅優良企業等の事業再生を目的とする「株式会社企業再生支援機構」(以下、同機構)が10月16日に発足したが、国税庁はこのほど、一定の要件の下、同機構が取りまとめた事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合、債務者側では@資産の評価損益の算入ができ、A期限切れ欠損金も利用できる、債権者側ではB原則、債権放棄等を寄附金課税の対象とせず、その損失を損金算入できるとしたほか、C再建企業の代表者等が経営責任を取るべく、一定の私財提供を行った場合には譲渡所得が生じないなどとして取扱いを整理した。同機構への文書回答の中で明らかにした(『株式会社企業再生支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて』(平成20年11月6日回答))。
 これまでも法的整理のほか、私的整理ガイドライン、整理回収機構(RCC)、中小企業再生支援協議会、事業再生ADR(特別認証紛争解決手続)といった「一定の私的整理」の場面では上記@ABの適用があるとされてきたが、上記Cのように一定の私財提供時の税務上の取扱いまでをも示したのはこれが初めて。


◆ 企業再生支援機構 地方の”中堅企業”が利用層に


 前述のように同機構は、主に地方の中堅企業、中小企業の事業再生を目的として設立されたもの。債権者調整機能だけでなく、”債権買取り機能”を持つ点で、他の私的整理スキームと異なる。
 仮に、同機構がメインバンクを除き、全ての金融機関等から債権を買い取ることができれば、その後はメインバンク及び同機構だけで事業再生を行うことができる。迅速な企業再建を果たせる可能性があるということだ。
 同機構を巡っては、大手航空会社が同機構管理の下で事業再生を図る意向を示したため、大企業が利用層になるものと誤解する向きもあるようだが、基本的には地方の中堅企業等を利用層と見込む。実際、中小企業再生支援協議会で再生計画をまとめ切れなかった場合には同機構を利用するケースもあると想定し、11月中旬には、中小企業の専門受付窓口「中小企業再生支援センター」を同機構内部に設置する予定だ。


◆ 代表者等に私財提供を求めることも


 ところで、同機構が関与して策定される事業再生計画では、経営責任の観点から再建企業の代表者に対し、原則として代表者等の退任を求めるほか、代表者等が退任しない場合には代表者等に対し私財提供を求めることがある。
 というのも、他の私的整理スキームと異なり、同機構が関与する事業再生は地方の中堅企業等を想定するものであるため、仮に再建企業の代表者等が地方の”名士”などである場合に退任してしまうと、その企業の営業活動が鈍り、事業再生が果たせなくなる可能性等があるからだ。つまり、代表者は退任しない代わりに、私財提供を行うことで経営責任を取るパターンが多いと想定されるということだ(実際、金融機関から私財提供を求められるケースはあるようだ)。私財提供は、同機構の関与を受けるための必須要件ではないが、場合によっては私財提供に応じざるを得ないこともあるといえよう。


◆ 再建企業の代表者等 私財提供の場面で課税関係は生じず


 その代表者等に係る税務上の取扱いだが、主には、「保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例」(以下、保証債務の特例、所法64A)の適用を受けることなどにより、その代表者等に譲渡所得が生じないとする旨の整理等を行っている。
 上記の特例は、例えば、A社が金融機関Bから100の借入れを行う際に、A社の代表者であるCが保証人となったが、その後、A社は経営危機に陥ったため金融機関Bに対し100を返済できなくなったような場合、金融機関Bは代表者Cに対し100の弁済を求めたとする。このケースで、代表者Cは土地等の譲渡により現金100を得て、これを金融機関Bに弁済したのであれば、代表者CはA社に対し100の「求償権」を行使できないこととなる。このような場合には、保証債務の特例の適用を受けることにより、代表者Cには譲渡所得はなかったものとみなされ、課税関係が生じないこととなるというものだ。
 同機構の関与により策定する事業再生計画では、上記例のような形の私財提供を行うことが見込まれ、そのような場合には、保証債務の特例(所法64A)の適用を受けることにより、譲渡所得に係る課税関係が生じないこととなるなどと整理されている。





(以上参考;週刊「税務通信」第3090号)
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