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M&Aニュース

                                               2009年12月24日
 




 政府税調 医療法人版”事業承継税制”は創設認めず 

           
 社会保険診療報酬の事業税非課税見直しは23年度以降の検討へ 


  
 平成22年度税制改正において厚生労働省の要望する「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の創設」、いわゆる医療法人版”事業承継税制”の創設は、税制調査会の査定で「D:認められない」との判定となった。
 税調での厚労省要望事項に対する集中討議では、医療法改正ですでに出資持分ありの医療法人の設立ができないにもかかわらず、社団医療法人45,000のうち出資持分のある医療法人が現時点で4,3000あること、そのうちの9割が一人医師医療法人という偏った状況で、相続等で持分の分散が懸念されるのはわずか1割の医療法人であることなどが指摘されており、制度創設の検討にあたっては、税制以前に整理・検討すべき点が多くあるということのようだ。
 社会保険診療報酬の非課税措置などの事業税の特例の存続については、当初、要望の抜本的な見直しができなければ認められないとされていたが、慎重な議論を要することから、23年度以降の検討課題とされた。


◆ 相続税の納税猶予は地域医療の再生と安定供給に不可欠と主張


 厚生労働省が創設を求めた特例は、社団医療法人の出資者の相続で持分の払戻し請求があった場合には、多額の払戻しで医療継続が困難なるおそれがあることから、出資持分なしの社団法人への移行計画のもと相続税の納税を猶予し、3年以内に持分を放棄して移行した場合には猶予税額を免除するというものだ。地域医療の崩壊を防ぎ、安定的に医療を提供するため必要だとされている。
 厚労省は、出資者に財産放棄を求め、一定の期間内の移行を促進するもので、特定の者の税負担軽減につながるものではなく、移行できなければ、原則どおり相続税が課されるだけで、税制の公平性に影響を与えないとした。
 医療法改正で持分ありの医療法人は成立できなくなっていて、既存の持分あり医療法人の出資者に財産放棄を強制することはできないので、出資者の相続を契機として、持分なし医療法人への移行を促進するということだ。


◆ 税制以前の問題点が未整理と指摘


 改めて論点を整理するとした26日の集中討議では、まず、約43,000ある出資持分のある社団法人の中で、約9割(37,878)が一人医師医療法人であることが指摘された。こうした偏った状況の中では、一人医師医療法人を対象に議論するのか、複数の医師で出資・経営する医療法人を対象にするかで、議論の行方が左右されるということだ。
 生前に出資持分放棄を協議する動機付けとするなら、税制で特例を設けることが、逆に生前協議のインセンティブをさまたげる懸念があること、院長の平均年収が収入ベースで3,000万円あるという統計もあり、課税を繰り延べる効果があるのかも疑問とされた。
 また、医療法で設立が禁止された医療法人であるのに、43,000の持分ありの法人が手当てなしで存在していることの原因は何かということに加えて、そもそも相続の問題は、親子、兄弟間で協議すべきことだと指摘、出資に基因する医業継続の問題は、相続税制の問題ではないということのようだ。
 税制は重要だが、地域の医療機関をどのように守っていくかという議論の中で、本題はそれ以外のところにあるということだ。政策は理解できるが、それと資産税という問題をどう整理していくかは別の問題だとしている。


◆ 経営承継円滑化法を前提とする中小企業の事業承継税制


 中小企業の事業承継税制については、その前提として経済産業省の所管する経営承継円滑化法がある。経営承継円滑化法で、事業承継の円滑化を総合的に支援する枠組みを儲け遺留分に関する民法の特例と、事業承継時における金融支援措置、そして、事業承継税制の適用のベースとなる要件を規定している。
 これとの比較からは、医療法人の医業継続においては、出資持分ありの医療法人から出資持分なしの医療法人に移行を促進する枠組や支援する仕組み、法制上の手当てがないことが指摘されるわけだ。





(以上参考;週刊「税務通信」第3093号)
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