2010年01月27日
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最高裁
タックスヘイブン税制の適用を認めず逆転で納税者支持
ガーンジー島の税を外国法人税に該当すると判断
ガーンジー島(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国領チャネル諸島ガーンジー)に本店を置く100%子会社が、26%の税率で納めた現地の税金が、外国法人税に該当するか否かを主な争点とした訴訟で、最高裁は逆転で納税者を支持する判決を行った(平成21年12月3日判決 平成20年(行ヒ)第43号)。
1審の東京地裁、2審の東京高裁は、ガーンジー島の子会社の租税負担割合は零となることから25%以下であり、特定外国子会社等に該当とするとしてタックスヘイブン対策税制を適用した課税当局の更生処分を支持、納税者の主張を退ける判決を行っていた。
◆ 税率を申請できる税
ガーンジー島で所定の要件を満たす法人は、申請により「国際課税資格」という税制上の資格を取得することができ、この国際課税資格を取得した法人は、0%超30%までの間で所得に対する税率を申請し、税務当局から承認された税率が適用される。
実際にガーンジー島の子会社は26%の税率で税金を納付していたが、この税率は子会社が申請をしてガーンジー島の税務当局が承認したもの。
このガーンジー島の税について日本の課税当局は、その子会社が支払った税金は、納税者の裁量が認められるものであり日本の外国法人税には該当しないと判断。タックスヘイブン対策税制を適用し、外国税額控除も認めない措置を執り、この処分を不服とした日本の親会社が訴訟を提起していた。
◆ 法令141に照らして検討
今般、最高裁は課税当局の処分を支持した1審、2審の判断を覆し、納税者を支持する判決を行った。
判決では、まず、外国法人税について、基本的な定義をしているのは法人税法施行令141条1項で、同条2項及び3項において実質的にみて法人税に相当する税及び相当するとはいえない税を具体的に掲げて、外国法人税の範囲を明確にしているとした。
問題となったガーンジー島の税の外国法人税該当性については、この法令141条3項1号に規定する「税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税」又は2号に規定する「税の納付が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者が任意に定めることができる税」に該当するか否かが検討の対象になり得るとした。
そして、これら1号又は2号に該当する税のみならず、該当しない税であっても実質的にみて、税を納付する者がその税負担を任意に免れることができることとなっているような税は、法人税に相当する税に当たらないものとして、外国法人税に含まれないものと解することができるというべきとした。
◆ 実質的に免れるすべはない税
最高裁の判断は、ガーンジー島において国際課税法人が納付した税について、標準税率課税又は段階税率課税による税とは異なり、納付後、さかのぼって免税の申請をすることができるとはされておらず、還付請求をすることができるともされていないことから、1号に規定する税に該当するということはできないとした。
また、納付が猶予される期間をガーンジー島の子会社が任意に定めることができたとはされていないことから、2号に規定する税にも該当しないとしている。
さらに、ガーンジー島の子会社は、税率26%の外国税を納付することによって実質的に外国税に相当する税を負担しており、l免れるすべはなくなっていることからすると、問題となっているガーンジー島の税は、1号又は2号に規定する税に類する税ということもできず、法人税に該当しないということは困難と結論づけている。
(以上参考;週刊「経営財務」第2948号)
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