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M&Aニュース

                                               2010年02月22日
 




 国税不服審判所
 平成21年1〜6月までの裁決事例を公表
  
 
     

    子会社株式の評価損の計上は認められないとした事例を公表


 ◆事案概要

 本件は、請求人がすべての株式を保有する外国子会社(以下P社)の資産状態が著しく悪化したため、P社の株価が著しく低下したとして損金に算入した株式の評価損について、原処分庁が、本件時業年度終了時にP社の株価の回復可能性が見込まれないとは言えないため、評価損の計上は認められないとして更生処分及び賦課決定処分を行ったのに対し、同処分の一部取り消しを求めた事案。
 審判所は、P社の株価の回復可能性は本件事業年度終了時のP社の業績等のみで判断するのではなく、翌事業年度にP社へ追加出資が行われることも含めて判断するため、P社の株価の回復が見込まれないとは言えないとして請求を却下した。
 (本件は、平成17年4月1日〜平成18年3月31日の事業年度の課税処分に係る不服審査であり、平成21年4月2日に裁決された。)


◆ 請求人 実質的に貸付金である本件増資ではP社の株価の回復は見込まれない


 P社の株価の回復可能性は本件専業年度終了時に判断するのであるから、翌事業年度に行う予定のP社への追加出資について考慮すべきではない。また、本件事業年度中に行ったP社への増資(以下本件増)は、本件増資を受けたP社がその同額を子会社のR社に出資することで、R社のリース料の支払いに充てられるものである。そうすると、本件増資は実質的につなぎ資金の貸付けであるため、P社の業績回復に直結する効果はないと主張した。


◆ 原処分庁 本件増資と追加出資によりP社の株価の回復が見込まれる


 本件増資と翌事業年度に行う予定の追加出資は、R社の資金収支の改善を目的としており、本件増資は翌事業年度の追加出資の一環で行われたものである。そのため、本件増資と追加出資を区分せずに本件事業年度終了時のP社の株価の回復可能性を判断すべきである。
 そうすると、R社のリース料の支払いに充てられた本件の増資だけでなく、R社にリース資産を買い取らせるための費用に充てられる翌事業年度のP社への追加出資により、R社の業績の回復が期待できることも含めて判断することとなる。R社の業績が回復することで、ひいてはその親会社のP社の株価が回復することも期待できると主張した。


◆ 審判所 翌事業年度の追加出資も含めて判断するため回復可能性がないとは言えない


 P社の株価の回復可能性は本件事業年度終了時に判断することとなるが、近い将来回復する可能性があるか否かの判断をするため、既に実行することが決定している翌事業年度以降の事業計画等も考慮して判断することが相当だと考えられる。
 よって、翌事業年度に請求人がP社に追加出資するのと同額を、P社がR社に対して出資することが本件事業年度中に決定していることから、それも含めて本件事業年度終了時のP社の株価の回復可能性を判断すべきである。
 そうすると、翌事業年度の追加出資で、R社の資産状態が改善されることから、P社の資産状態も改善される方向にあると考えられるため、P社の株価について近い将来回復する見込みがないとは言えないとした。
 なお、本件では「本件事業年度終了時にP社の株式の評価損の計上は認められるか否か」、「本件増資前のP社の株式の評価損の計上は認められるか否か」が争われたが、いずれも認められないとして請求を棄却した。




(以上参考;週刊「税務通信」第3099号)
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