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M&Aニュース

                                               2010年02月25日
 




 経産省 「事業再生に係るDES研究会報告書」を公表
     
 
     

     DES対象債権 税務上の「時価」の評価方法を提案


 
 経済産業省は1月14日に「事業再生に係るDES研究会報告書」を公表し、その中で企業再生税制の適用対象となる一定の私的整理でDESを行う場合に限定して、その際のDES対象債権の”税務上の時価の評価方法”を一案として示した。
 従前から実務家の間では、DES対象債権の税務上の時価の評価方法が不明瞭である点がDES利用のネックになっているとの指摘があり、同報告書はこれを受け、取りまとめたもの。例示された評価方法は簡便なものであるため、中小企業の再生局面でも有効ではないかと見る向きもある。今後は同報告書を基に国税当局に事前照会を行うかなどを検討。早ければ2月中には税務上の取扱いを確認したいとしている。


◆ DES(デット・エクィティ・スワップ)とは


 Debt Equity Swap(デット・エクィティ・スワップ)とは、負債(Debt)を資本(Equity)に振り替える(Swap)ことにより、債務を資本化することをいう(債権者からみれば債権の株式化)。
 例えば、下記の仕訳例のように、@現金100で貸付けを行ったが、A債務者が経営悪化により全額を弁済できなくなったためDESを実施した場合、債権者は貸付金100を債務者に譲渡する一方、債務者は対価として株式80を発行し、債権者に譲渡(貸付債権の現物出資)する。こうすることで、債権者側では貸付金100と借入金100を相殺できるため、結果的に有利子負債の軽減や、債権者との取引を継続できる(通常、債権放棄した場合、取引関係は消滅することが多い)。単純な債務免除と比べ、債権者・債務者双方にメリットがあると言われる。


◆ DES対象債権 税務上の「時価」が不明確との声も


 とはいえ、DESを行う場面では、その対象債権に係る税務上の時価の評価方法が不明確であることがネックとなり、DESの利用をあきらめるケースもあったようだ。DESに関連する税法としては、平成17年度税制改正でいわゆる企業再生税制を講じ、18年度改正、20年度改正で拡充を行ってきたが、残る問題として実務家の間では、DESの対象債権に係る税務上の時価評価の方法が不明確であるとの指摘があったということだ。
 実際、実務面では様々な時価の評価方法があるが、評価方法によっては費用が生じたり、見積り要素が入ることにより適切な税務上の時価を算出できないこともあるため、より簡便な評価方法を求める向きもあったようだ。


◆ 「再生企業の合理的に見積もられた回収可能額」をベースに時価算定


 これを受け経産省では、企業再生税制の適用対象となる一定の私的整理(私的整理ガイドライン、RCC、中小企業再生支援協議会、事業再生ADR、企業再生支援機構の関与する私的整理)でDESを行う場合に限定して、DESの対象債権に係る税務上の時価の評価方法を検討した結果、「再生企業の合理的に見積もられた回収可能額」を基に評価することが適切であるとの案を示した(一般的に、適格現物出資によるDESは親子会社間やオーナー会社で行うことが多いため、同報告書では検討していない)。
 企業再生税制の適用対象となる一定の私的整理でDESを行う場面においても、再生企業からの回収可能額は、法人税法施行令第24条の2第1項<再生計画認可の決定に準ずる事実等>で規定するような債務免除額の算定方法で計算しているため、これをベースに税務上の時価を算定することが適切でないかとする考えなどが背景にあるようだ。
 仮に同政令にあるような算定をするのであれば、各私的整理スキームの資産評定基準に則って実態貸借対照表を作成し、債権者調整等を行った後に決定する回収可能額(同時に債務免除額を決定)をベースにDES対象債権の時価を算定できるため、他の評価方法に比べ、事務負担やコストが軽減されるものと見る向きもある。

  なお、財務省が公表している「改正税法のすべて(平成21年度改正版)」の中では、DESの対象債権の税務上の時価として、@第3者へ譲渡した場合の価額、A精算時の処分価額を一例として示している。




(以上参考;週刊「税務通信」第3100号)
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