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M&Aニュース

                                               2010年03月05日
 




 消却株式の適正な譲渡対価の額は”時価純資産額”を  基に算定
   
     
 
     

  審判所 納税者の主張を棄却し払戻金額との差額を寄付金認定 


 
 子会社の減資に伴い株式消却(強制消却)が行われたことにより各子会社から払戻しを受けた金銭の額を消却株式に係る譲渡対価の額とし、その帳簿価額を譲渡原価の額として算定した株式譲渡損失額を損金の額に算入した価額であり、その金額と納税者が計上した譲渡対価の額との差額は各子会社に対する寄附金に該当するとして当局から法人税の更生処分等を受けたことを不服とし、審査請求が行われた事案で国税不服審判所は平成21年12月16日、納税者の主張を棄却し当局の主張を認める判断を行った。
 納税者は、旧商法上の減資払戻規制に基づき実際に払い戻された金額が適正な譲渡対価の額であると主張していたが、審判所は、旧商法の観点から合理性があることをもって適正な価額であるとはいえないとした。


◆ 株式の適正な譲渡対価の額は商法の制限規制が上限か?


 本件の減資に伴う株式の消却は、会社法が施行される前に行われたもの。旧商法では、減資を行う際、資本の減少額から資本の欠損補填額を控除した金額を超えて株主に払い戻しを行うことが禁じられていた(商法375条「減資払戻規制」)。そのため、納税者は、この減資払戻規制の限度内の額を払戻金額として決定し、この金額を譲渡対価の額として申告を行った。
 納税者は、払戻金額を譲渡対価の額としたことについて、旧商法上で強制消却に際し減資払戻規制を超えて払い戻すことはできないのであるから、少なくとも同規制の限度内で成立する金額が譲渡対価の額として取り扱われるべきであり、減資により実際に払い戻された金額が、適正な価額であるとするのが相当であると主張していた。


◆ 払戻金額と時価純資産額との差額は寄附金


 これに対して国税不服審判所は、(当時の)法人税法上では株式の消却を譲渡とみて有価証券の譲渡損益を認識することとなることから、売買実例等がない株式の消却に係る譲渡対価の額についても、”売買等の通常の譲渡と同様に解すべき”であり、消却株式の適正な譲渡対価の額は、株式の消却の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額とするのが相当である。
 商法の観点からみて払戻金額に合理性があることをもって、法人税法適用の場面において払戻金額が消却株式の譲渡時における適正な価額とはいえない。
 このことから、本件についても、消却株式の適正な譲渡対価の額は、時価純資産額を基礎に算定すべきであり、請求人が収受すべき譲渡対価の額(時価純資産額を基礎に算定した金額)と実際に払戻を受けた金額との差額は、経済的価値のある株式を無償又は低廉な価額で譲渡したことにより生じたものである等の理由から、この差額は”寄附金”に該当すると判断した。




(以上参考;週刊「税務通信」第3103号)
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