2010年03月17日
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租税条約の改正で情報交換規定の国際標準化が顕著に
22年度改正では租税条約の実施特例法を改正し国内法も整備
「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための二国間の条約」いわゆる租税条約の改正が相次いで行われているが、最近行われている租税条約の改正で注目されるのは、情報交換規定が国際標準に改正されている点だ。
最近の租税条約の改正は、最新のOECDモデル条約に基づき、国際的な流れに沿って情報交換の規定が改正されており、G20等でも重要性が確認されている国際的な脱税及び租税回避行為の防止について整備が図られている。
一方、国内においては、平成22年度の税制改正で、租税に関する国際標準に基づく課税当局間の実効的な情報交換の実施が可能となる改正が行われる。
この国内法の改正は、現行の「租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」を「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」に改めるもので、租税条約等を締結している相手国等の税務当局に対し、租税条約等の実施特例法を改正することにより、相手国等と租税に関する情報を交換できる国内の法律環境の整備を行うものだ。
これまで、税務当局の国際的な情報交換については、租税条約において情報交換規定が設けられているものの、守秘義務等の問題から、十分に情報を提供できていなかった面もあったようだが、国内法が整備され、租税条約等の改正交渉においても情報交換規定が強化されていることから、このような積極的な国際的情報交換推進の動きは、今後益々顕著なものになると思われる。
◆ 情報交換が世界的な流れ
財務省のHPでは「租税条約に関するプレスリリース」で、租税条約の改正交渉や基本合意、条約の発行等の動向と内容を公表している。
昨年末以降の、租税条約の改正の動向をみると、マレーシア、シンガポール、クエート等との租税条約や租税協定の改正について基本合意や改正議定書の署名が行われたことが公表されており、また、それ以前においても、スイスとの条約改正が基本合意に至ったことが発表されている。
そして、その改正内容の説明では、租税に関して国際標準に基づく課税当局間の実効的な情報交換の実施が可能となることが明らかにされている。
最近の租税条約の改正交渉において情報交換規定の見直しは、最新のOECDモデル租税条約26条の情報交換規定に基づき行われており、銀行その他の金融機関の情報であることを理由に情報提供を拒否することを認めないと解すること等が盛り込まれた内容となっている。
前記の国や地域では、バミューダとの租税協定が、情報交換規定を主体とする内容となっており、昨今の国際的な流れが顕著に表れたものとなっている。
◆ 国内法も整備へ
22年度の税制改正では、国内法においても、租税条約の実施特例法を改正し、情報交換の実施を効率的かつ円滑に行うための整備が行われる。
この改正は、近年、金融危機を背景に、税に関する当局間の情報交換の重要性が確認されて、情報交換を実施するために租税条約等を積極的に締結する動きに対応したものだ。
今回の改正で国内法が整備されたことと併せ、今後ますます租税条約等の情報交換規定の改正が進められることが予想され、国際的な租税回避が強化されることとなろう。
(以上参考;週刊「税務通信」第3104号)
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