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M&Aニュース

                                               2010年04月20日
 




期限切れ欠損金の利用要件
実態貸借対照表上で債務超過であること
       
     

  

   実態貸借対照表作成時の税務上の時価「処分価格」による方向に
            



 平成22年度税制改正では、清算所得課税廃止により期限切れ欠損金の利用範囲拡大を行ったが、その利用に際しては、清算事業年度各期末において「残余財産がないと見込まれるとき」に該当する必要がある(法法59B)。
 この「残余財産がないと見込まれるとき」には、例えば実態貸借対照表の上で債務超過であることなどが該当するようだが、この点につき実務家の中には、「処分価格」で作成した実態貸借対照表の上で債務超過であるか否かを判断できるのかどうか疑問を持つ向きもあるようだ。会社法上、会社が解散した場合には「処分価格」で貸借対照表を作成するよう義務付けているのに対し、税務上は、例えば資産の評価損計上時には、その計算の基礎となる期末時価を「通常の譲渡価額」、低価法評価損計上時には原則「正味売却価額」(場合によっては再調達原価も可)とするなどと取り扱っているため、仮に処分価格で貸借対照表を作成しても、税務上はこれを受け入れないのではないかと懸念されているからだ。
 しかし、この点につき現時点では、基本的に税務上も「処分価格」で作成した貸借対照表の上で債務超過であれば、期限切れ欠損金の利用を認めるものと考えられる。


◆ 「残余財産がないと見込まれる」ならば期限切れ欠損金が利用可能に


 前述のように22年度税制改正により、22年10月1日以後に解散した場合には、清算事業年度各期末において「残余財産がないと見込まれる」ならば、期限切れ欠損金の利用が認められる(法法59B)。仮に、解散に伴い債務免除益、私財提供益、資産の譲渡益などが生じた場合、上記要件をクリアしているならば、これらの益と期限切れ欠損金を相殺させることにより、多額の税負担は生じなくなる。


◆ 「残余財産がないと見込まれる」か否か 実態貸借対照表の上で判断


 この「残余財産がないと見込まれるとき」とは実質債務超過であることを指し、例えば実態貸借対照表の上で債務超過であるような場合がこれに該当するようだ。帳簿価額ベースの貸借対照表の上で債務超過であっても、実態貸借対照表の上で債務超過でないなら、期限切れ欠損金の利用はできないということだ。


◆ 会社法上は処分価格ベースで貸借対照表を作成するが


 とはいえ、この点につき実務家の中には、どのような”時価”を用いて実態貸借対照表を作成すればよいのか疑問を持つ向きもある。
 会社法の上では、会社が解散した場合、原則「処分価格」により財産目録を作成し、これを基に貸借対照表を作成しなければならないとしているのに対し(会社法492、会社法施行規則144、145)、税務上は、例えば資産の評価損(法法33A)を計上する場合、その計算の基礎となる期末の時価は処分価格、正味実現可能価額、再調達原価などではなく、そのまま指標収益されるものと仮定した場合の「通常の譲渡価額」によるなどと取り扱っているため(法基通9−1−3)、仮にも処分価格により貸借対照表を作成しても、税務上はこれを受け入れないのではないかとする懸念があるからだ。つまり、期限切れ欠損金利用の前提条件となる「残余財産がないと見込まれる」ことに該当するかどうかは、「処分価格」ベースの貸借対照表ではなく、使用収益を前提とした「通常の譲渡価格」ベースの貸借対照表上、債務超過であるか否かなどで判断することとなるのではないかと考える者もいるということだ。


◆ 税務上も処分価額による貸借対照表で判断する方向へ


 しかし、この点については税務上も、基本的には「処分価格」ベースの貸借対照表の上で債務超過ならば、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当すると取扱うものと考えられる。
そもそも解散は、会社の事業継続を目的としていないからだ。
 もっとも、これらはあくまでも現時点での方向であり、まだ税務上の取扱いは明らかになっていない。詳細は取扱いの上で明らかにされるものと見られるので留意されたい。






(以上参考;週刊「税務通信」第3110号)
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