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M&Aニュース

                                               2010年07月28日
 





 「会計基準のコンバージェンスと確定決算主義」を読む
      
                        
 
  

        JICPA 税制に対する影響を考察


 
 
 会計基準の国際的統一化が進むなか、日本でもコンバージェンス作業が着々と進められている。ASBJは2007年8月に「東京合意」を公表、2011年6月までにIFRSと日本基準の主要な差異のコンバージェンスを終了させることを明らかにした。その後、短期、中期、中長期のコンバージェンス計画を公表、2度の修正を経て、現在の計画に至っている。


◆ 短期、中期、中長期に分け税制対応を整理


 日本公認会計士協会(JICPA)が6月に公表した租税調査会研究報告第20号「会計基準のコンバージェンスと確定決算主義」では、各コンバージェンス項目に関連する税制の対応状況が整理・分析されている。以下では、その概要を、1.短期、2.中期について紹介する。


◆ 1.短期コンバージェンス項目


 短期コンバージェンス項目に係る税制の対応状況について、主なポイントは次の通り。

◎ストック・オプションについては、所得税の課税時期との関連で、役務提供費用の損金算入時期が企業  会計となる

◎減損会計、資産除去債務など恣意性の排除または債務の確定性の問題から、企業会計に対する対応  が全く行われていない事実がある。これらは、法人税法の基本的理念との調整を要する側面がある。

◎企業結合と組織再編税制とは、その再編形態の区分に関して考え方が基本的に異なる部分がある。それを合致させない限り、両者の齟齬は解消しない。ただし、税務上ののれんである資産調整勘定の償却は、損金経理要件が課されていないため、逆基準性を発生させない。

◎結論として、「所得計算に関する恣意性の排除及び費用の債務確定性」などの法人税法の基本的理念ないしは所得税法等に抵触せずに改正が可能な部分については、企業会計基準に沿った法人税法の改正が行われている。
一方、そうでない部分については、対応が進んでいないか、抵触しない範囲での一部の対応にとどまっているのが現状である。


◆ 2.中期コンバージェンス項目


 中期コンバージェンス項目のうち、税制に対する影響がないと考えられるものは「セグメント」(注記情報であるから税制とは関係なし)、「企業結合」(少数株主持分の取扱い、取得原価の算定、配分、子会社の支配喪失等は、連結財務諸表に関するものであり税制とは関係なし)、「廃止事業等」(会計上の損益表示区分が異なるのみであれば、課税所得に影響はない)、などである。
 一方、税制との関係で注目すべき項目については、以下の通りである。

<のれんの償却について(企業結合関連)>

 会計上、(正の)のれんについて償却が認められなくなっても、(正の)のれんを非適格合併等が行われた場合の資産調整勘定として税務上認識した場合には、償却費は損金経理を要件とせずに損金として認識できる(法人税法62の8@CD)。このため、会計上のれん償却を行わなくとも、税務上償却メリットを享受できる。ただ、会計上(正の)のれんに対し減損損失を認識した場合には、税務上は損金不算入であるから税務メリットを減損認識時に享受できない。
 なお、法人税法上の営業権に該当するものとして、会計上(正の)のれんを認識した場合には、営業権の償却費について法人税法上損金経理が必要である(法人税法31@)。このため、会計上償却費を認識しなければ税務上の償却メリットを享受できない。

<無形資産>

 (研究開発費)
 法人税法上、開発費は繰延資産に該当し、損金経理を要件として、各事業年度において開発費相当額までの償却費の損金算入が認められている(法令14@三、64@一)。したがって、企業が会計上開発費を資産に計上し、独自の償却年数で償却することは税務上も容認される。よって、企業会計と法人税法で齟齬は生じない。

 (事後測定)
 法人税法上、再評価モデルに相当する規定はない。

 (耐用年数)
 法人税法では、無形資産は「無形固定資産」として価値の減少しないものを除き減価償却資産として、限定列挙されている(法令13八)。よって耐用年数を確定できない減価償却資産としての無形固定資産という考え方は示されていない(耐用年数省令、別表三)。また資産の評価損に関しては、IAS36の減損に比べ物損・再生案件に限られるため、適用範囲が限定的である(法法33)。




       (以上参考;週刊「経営財務」第2974号)
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