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M&Aニュース

                                               2010年08月10日
 





   グループ法人税制に関する取扱いを整備
      国税庁 法人税基本通達等を公表
          
                                
 
   

    残余財産がないと見込まれる場合の判断時期等も明確化






 国税庁は7月16日、平成22年度の法人税関係法令等の改正に対応した法人税基本通達等の一部改正を公表した(平成22年6月30日付「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」課法2−1、課審5−25)。
 平成22年度法人税改正では、グループ法人税制の導入、清算所得課税の廃止、残余財産確定の欠損金の引継ぎ、組織再編税制の見直しなどが行われている。今回の通達改正では、これらの制度に関する取扱いの整備や留意的事項を示しているが、取扱いの多くは本誌で既に報じたものだ。
 また政策税制や国際課税などに関する租税特別措置法関係通達は今後公表される見込みだ。


◆ 名義株は実質の権利者のものとして完全支配関係を判定


 グループ法人税制の譲渡損益調整資産の課税繰延べや寄附金・受贈益の損金不算入・益金不算入は、完全支配関係(100%の持株関係)のある法人間の取引で適用される。この完全支配関係の判定で重要となる「完全支配関係を有することとなった日」について、具体例をだして示しており(法基通1−3の2−2)、株式の購入は引渡し日、新設法人との関係は新設法人の設立後最初事業年度開始の日、合併、分割、株式交換では合併等の効力を生ずる日としている。同取扱いではさらに、株式を譲渡した場合の譲渡損益の計上時期は、引渡し日ではなく、譲渡契約成立日となることとしている(同注書き)。
 また、名義株については実際の権利者のものとして判定すること(法基通1−3の2−1)、従業員持株会は信託銀行方式によるものは該当しないと扱われること(法基通1−3の2−3)が明らかにされている。
 これらの取扱いについては、適格合併等における欠損金の引継ぎ等の適用要件の支配関係(50%超の持株関係)の判定も同様としている。


◆ 自己株の取得予定株式等は公開買付期間中に法人が取得した上場株式    等が該当


 受取配当等益金不算入制度では、自己株式等として取得されることが予定されている株式等の取得に係るみなし配当については益金不算入とならなくなった(法法23条B)。
 取扱いでは「自己株式等の取得が予定されている株式等」に関して、上場会社等が自己株式の公開買付期間中に、法人が取得した当該上場会社等の株式が該当することを明らかにしている(法基通3−1−8)。
 また、法人が公開買付期間中に取得した株式を、買付けの応募申込み前に予定買付株式数に達したことで買付けが行われず、公開買付期間終了後に発行法人へ株式譲渡したことでみなし配当が生じる場合等の、みなし配当の額は、l受取配当等の益金不算入の規定の適用があることが明記されている(同注書き)。
 さらに、外国子会社配当益金不算入制度についても、自己株式として取得予定の株式等について、みなし配当が生じる場合、みなし配当の益金不算入の不適用(法法23条の2A)の取扱いは、この法人税基本通達3−1−8の取扱いと同様としている(法基通3−3−4)。


◆ グループ内であれば100%所有でない子会社からの配当も全額益金不算   入に


 配当等の計算期間中に完全子会社株式等から受ける配当等の額は、負債利子控除を適用せずに全額益金不算入となった。完全支配関係のあるグループ内法人からの配当等について、直接・間接的に完全子会社株式を100%所有していない法人でも、株式の所有期間要件を満たせば、負債利子控除不適用で全額益金不算入となることを明らかにしている(法基通3−1−9)。
 つまり、図1のようなグループ法人間で、”子会社2”から”子会社1”への配当に関して、子会社1は子会社2の株式を直接・間接で100%所有していないものの(保有割合40%)、100%持株グループに属しているため、所有期間要件を満たせば、配当等について負債利子控除を適用せずに全額益金不算入となる。







◆ 9−4−1と9−4−2に該当する寄附金に該当しない支援は受贈益に当た  らず


 法人による完全支配関係における受贈益の益金不算入規定(法法25条の2)では、金銭の無利息貸付けや役務の無償提供など金銭授受を伴わない経済的利益の供与を受けた場合の取扱いが示されている。受け入れた経済的利益の額に対する対価が損金算入とされ、同額を受贈益の額として益金算入とすることになり、さらにこの経済的利益の額が法人税法上の寄附金に該当すれば、受贈益の額を益金不算入となることとしている(法基通4−2−6)。
 また、子会社等に対する損失負担や債権放棄等の経済的利益の額が、法人時基本通達9−4−1(子会社等を整理する場合の損失負担等)や9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の取扱いにより、寄附金の額に該当しない場合は、支援等に係る受贈益の額は益金算入となることとしている(法基通4−2−5)。


◆ 個人の下の法人が法人を完全支配していれば寄附金が全額損金不算入


 法人による完全支配関係間の寄附金の損金不算入では、個人にぶら下がっている法人が100%子会社を持っている状況での、法人間での寄附金の支出は損金不算入となることとしている(法基通9−4−2の5)。
 つまり、図2のように、会社Aは個人に株式の100%を所有されているものの、会社Aと会社Bの間では法人間だけで完全支配関係があることから、会社Aと会社Bとの間での寄附が行われた場合、寄附金は全額損金不算入となる。





◆ 最後に支配関係があった日は支配関係があることとなった日


 適格合併等に係る被合併法人等の欠損金の引継ぎ制限と合併法人の欠損金使用制限に関する基準である適格合併等継続期間5年間の起算日である「最後に支配関係があることとなった日」について、適格合併等の日の直前まで継続して支配関係がある場合の支配関係が生じた日とすることを留意的に示している(法基通12−1−5)。


◆ 債務超過であれば残余財産がないと見込まれる状態


 清算所得課税の廃止に伴い、清算中の各事業年度で「残余財産がないと見込まれる」場合、所得計算上、期限切れ欠損金を損金算入とすることができる(法法59条B)。
 この残余財産がないと見込まれる判定時期は、清算中の各事業年度末時点によるとし(法基通12−3−7)、残余財産がないと見込まれるケースとして債務超過の状態にあるときが該当するとしている(法基通12−3−8)。
 また、残余財産がないと見込まれることを説明する書類には具体例として、実態貸借対照表を挙げており(法基通12−3−9)、資産価額は処分価額によるものの、法人の解散が事業譲渡等を前提としたもので、譲渡先で事業用として使用される見込みの場合、通常の譲渡価額によると明記している(同注書き)。


◆ 大法人に間接的にぶら下がる法人も対象


 資本金5億円以上の大法人が所有する100%子会社は中小企業特例の適用を受けられなくなる。所有は直接保有だけでなく、間接保有も含まれるが、適用を受けられなくなる100%子会社には、大法人の孫会社、曾孫会社も該当することを留意的に明らかにしている(法基通16−5−1)。
 逆に、中小企業が大法人の100%を所有している場合、この中小企業については中小企業の特例を受けられることになる(図3のように大法人株式を100%所有している中小法人)。









       (以上参考;週刊「税務通信」第3124号)
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