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M&Aニュース

                                               2010年09月03日
 




        100%子会社からの資産の移転



  
 適格現物分配と譲渡損益の繰延べ課税関係に相違          
        
              

     
 完全支配関係のある子会社から親会社への譲渡取引には、譲渡損益調整資産の課税繰延べと適格現物分配による方法が考えられるが、この2つの制度では支出側法人と受領側法人の両社とも税務処理が異なる。
 会社法上の手続きに即っていれば、譲渡損益調整資産の対象資産を現物分配で移転することも可能であるとのこと。子会社から親会社への資産移転では課税の状況を検討して対応することになろう。


◆ 支出側は適格現物分配では繰延されず


 譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度は、完全支配関係のある法人間での簿価が1千万円以上の固定資産や土地、有価証券などの対象資産を譲渡した場合、支出側法人(譲渡法人)にて簿価と時価との差額の譲渡損益額を繰延べて、受領側法人(譲受法人)では取得価額を時価で受入れる(法法61条の13@)。譲受法人がその資産をさらに別法人への譲渡や償却、除却等した場合、譲渡法人で繰延べた制度には通知義務が課せられている。
 一方、適格現物分配は、完全支配関係のある内国法人間で行われた現物分配のことで(法法2条十二の十五)、支出側法人(現物分配法人)では簿価で譲渡したものとされる(法法62条の5B)。受領側法人(被現物分配法人)では取得価額を時価ではなく簿価で資産を受入れ、受入れた時に生じた収益は益金不算入となる。


◆ 受領側でも時価受入れと簿価受入れの違いが


 このように、課税繰延べ制度と適格現物分配では支出側法人と受領側法人の税務上の対応が異なるため、資産の移転に係る譲渡益の額も変わってくる。
 例えば、簿価3千万円、時価5千万円の土地を、100%子会社から親会社へ簿価譲渡したとする。適格現物分配でなく課税繰延べ制度であれば、支出側法人にて簿価と時価との差額2千万円の譲渡益が繰延べられ、受領側法人では時価5千万円で資産を取得する。しかも、時価譲渡ではないため、譲渡益相当額2千万円について寄附金の損金不算入・受贈益の益金不算入の適用を受ける。一方、適格現物分配の譲渡では、支出側法人では譲渡益は発生せず、受領側法人では簿価3千万円の資産を益金不算入で受け取る。
 その後、受領側法人が第三者に7千万円で売却したとする。課税繰延べ制度の土地の場合、支出側法人で譲渡益2千万円が戻し入れられ、受領側法人では時価との差額2千万円の譲渡益が生ずる。適格現物分配の場合、受領側法人で4千万円の譲渡益が生じるものの、支出側法人にはまったく影響はない。
 ただ、1千万円以上の土地等について、適格現物分配による譲渡でも税務上問題ないとのことだが、現物分配は剰余金の配当であるため、支出側法人で株主総会や取締役会での決議と、配当原資の1/10の準備金の積立が必要となる(会社法445条C、454条@、会社計算規則22条)。




       (以上参考;週刊「税務通信」第3128号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






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