2010年09月10日
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事業再生研究機構
清算時の期限切れ欠損金利用に係る報告書
を公表
「残余財産がないと見込まれる」ことの説明書類 具体案を提示
事業再生分野の税務問題を整理・検討する任意団体・事業再生研究機構は7月、「平成22年度税制改正後の清算中の法人税申告における実務上の取扱いについて」と題する報告書を公表した。
22年度改正で清算所得課税が廃止されたことに伴い、22年10月1日以後解散分からは、各清算期末において「残余財産がないと見込まれるとき」には期限切れ欠損金の利用が認められることとなったが、この点に関し、実務上の取扱いを明確化する必要があると考えられる論点について検討を行ったもの。具体的には、「残余財産がないと見込まれる」ことの説明書類の範囲、粉飾決算で架空資産を計上している場合の取扱い、破産開始決定後の破産管財人による法人税申告の扱いなどについて一案を提示している。
◆ 「残余財産がないと見込まれる」ことの説明書類
前述のように、法人税法第59条第3項では、各清算期末において「残余財産がないと見込まれるとき」には期限切れ欠損金の利用を認めており、その確認の際に要する説明書類としては、一般的には実態貸借対照表が該当するとされる(法基通12−3−9)。
この点につき同報告書では、例えば裁判所等が関与する手続の下、債務超過であること等の原因を裁判所等が確認している場合には、実態貸借対照表に限らず、@破産、特別清算の開始決定がなされた場合には「破産等の開始決定の写し」、A会社更生、民事再生の開始決定後に清算手続きが行われる場合には「再生計画等に従った清算であることを示す書面」、B独立した第三者等が関与して策定された事業再生計画に基づいて清算手続が行われる場合は「独立した第三者等の調査結果で会社が債務超過であることを示すもの」も上記の説明書類に含めることが適当であるとの見解を示している。
◆ 粉飾決算で架空資産を計上している場合の取扱い
粉飾決算を行っている会社では、貸借対照表上は資産として計上されているが、実際には存在しない架空資産(=実在性のない資産)の存在が見つかることがある。この場合、実態貸借対照表上は架空資産をないものとして評価するため債務超過額がその分増加し、結果として債務免除をうけるのであれば、債務免除益も増加するという問題が生ずる。
この点について、過去の帳簿書類を調査した結果、@仮にその架空資産の計上根拠等が判明した場合には、更生期限内のものについては適正な手続きの下、その原因の生じた期の青色欠損金とし、Aその架空資産の計上根拠等が判明しない場合は、裁判所等の手続きを経て架空資産であることが確認された場合には、その架空資産の簿価を期限切れ欠損金と扱うことが適当との考えを示している。
◆ 破産開始決定後の破産管財人による法人税申告
破産手続き中の会社においては、裁判所が選任した破産管財人が会社財産の管理処分権限を有するとともに、破産開始決定後の法人税申告を行うこととなるが、実務においては、破産会社では破産前の法人税申告を行っていないなど会計書類が散逸していたり、従業員を破産申立て時に解雇しているなどの理由で、従前の申告を継続した形での申告が困難な会社が多く存在するという実状がある。すなわち、破産管財人においては、破産開始決定時点での財産総額、開始決定後の収支(財産処分)状況、債務総額、資本金などしか把握できないという問題が生じることがある。
これを受け、同報告書では、破産開始決定時点での財産総額、資本金の額、債務総額を用いた貸借対照表を作成して債務超過額を算出し、これに資本金額を加えたものを期限切れ欠損金と取り扱う案などを示した。
(以上参考;週刊「税務通信」第3129号)
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