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M&Aニュース

                                               2010年09月15日
 




 

      解散子会社の未処理欠損の帰属年度は
           適格合併と同様
     
         
       

        
子会社株式評価損は慎重な対応が必要
        
              

     
 完全支配関係がある企業グループの子会社が解散した後に残余財産が確定した場合、子会社の未処理欠損金額を親会社に引き継げることとなった。
 解散子会社の事業年度と親会社の事業年度が一致していれば、未処理欠損金額の帰属時期は分かりやすいが、解散の場合にはみなし事業年度の規定の影響を受けることから、子会社と親会社の事業年度でズレが生じる可能性が高い。
 この点、親会社の事業年度への未処理欠損金額の帰属時期の仕組みは、適格合併と同様であるものの、原則的な方法に加えて特例的な規定もあるので、確認しておきたい。
 また、未処理欠損金額との絡みで気になっている子会社株式の評価損については、損失の二重計上が起こりうることから、慎重な対応が必要だろう。


◆ 子会社の未処理欠損金額が生じた事業年度 
  開始日が含まれる親会社の事業年度に帰属



 10月1日以後に解散が行われ、その後に残余財産が確定したことにより、親会社へ引き継ぐこととなる解散子会社の未処理欠損金額は、最後事業年度を含む残余財産確定の日の翌日前7年前以内に開始した各事業年度(前7年内事業年度)で生じた欠損金額とされる。それぞれの未処理欠損金額は、解散子会社の事業年度開始日の属する親会社の事業年度に引き継がれるが(法法57条A)、この帰属時期の考え方は適格合併による欠損金の引継ぎと同じもの。
 例えば、親会社(3月決算)の100%子会社(3月決算)がX5年8月末に解散し、X7年5月末に残余財産が確定した場合、前7年内事業年度の最も古い事業年度は「X1年4月〜X2年3月」となる。その結果、「X1年4月〜X2年3月」以後に存在する未処理欠損金額を親会社に引き継げることとなる。
 また、解散子会社の未処理欠損金額の引継ぎでは、適格合併による欠損金の引継ぎと同様の特例措置が講じられていて、親会社が解散子会社の未処理欠損金額の生じた最も古い事業年度開始日よりも後に設立した場合、親会社の設立前に生じた未処理欠損金額については、未処理欠損金額の発生事業年度を親会社の事業年度とみなすことになる(法令112条A)。
 例えば、親会社(3月決算)が、X4年4月1日の設立後に100%子会社(6月決算)を保有したが、子会社がX5年6月末に解散し、X7年9月末に残余財産が確定したとする(欠損金の引継ぎ制限はないものとする)。親会社の設立前に生じた未処理欠損金額の発生事業年度を、親会社の事業年度とみなすことから、「X1年7月〜X2年6月」と、「X2年7月〜X3年6月期」、「X3年7月〜X4年3月」までの期間を親会社の事業年度とみなして引継がれることになる。


◆ 評価損の損金算入は二重計上を念頭に置いていない


 一方、10月1日以後の解散で残余財産が確定したケースで、完全支配関係がある解散子会社から残余財産の分配で金銭や資産の交付を受けた場合、解散子会社株式の譲渡損益を計上できなくなる(法法61条の2O)。子会社株式の譲渡時期を解散前とするか解散後とするかによって、譲渡損益の計上が認められるか否かが変わってくることになるが、他方で解散子会社の残余財産確定時まで子会社株式を所有している場合には、解散子会社の未処理欠損金額の引継ぎができる。このことから、全体としてみれば整合性のとれた仕組みとも言えよう。
 ところで、これらの取扱いを前提として、解散子会社の残余財産確定までに、親会社において子会社株式の評価損を計上させた上で、さらに、未処理欠損金額を引継ぐこととなると、親会社において損失が二重で計上されることになる。企業グループで解散予定の会社があるところでは、果たしてこのようなことが問題なく認められるのかという疑問が生じているようだ。
 この点、現行制度の下での株式の評価損は、発行法人の資産状態が著しく悪化したために、その価額が著しく低下したことなどの事実が生じた場合、損金算入が認められることとされている。しかしながら、評価損の損金算入は、一定事実の要因で損失が実現したとみられる場合に認められるもので、解散子会社の未処理欠損金額の引継ぎなど他の制度と併用することで損失が二重計上されることまでも念頭に置いたものでないという。
 このため、損失の二重計上のような課税上の弊害があると考えられる取引や税務処理については、慎重に対応することが賢明であろう。




       (以上参考;週刊「税務通信」第3129号)
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