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M&Aニュース

                                               2010年09月24日
 




 

  公益法人に対する寄附のみなし譲渡所得の
        非課税特例で注目判決  
    
   
        
事業に供した寄附財産の換価による金銭は事業供用要件を充足せず           

     
 公益法人に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税特例(措法40条1項後段)の取り消しに伴なう、所得税の更生処分を不服として提起された訴訟で、東京高裁は一審の東京地裁に引き続き、課税当局の処分を支持する判決を行った(平成22年8月25日判決言渡 平成22年(行コ)第103号)。
 これは、相続人の父が公益法人に対して行った株式の贈与について、一旦はみなし譲渡所得の非課税特例が適用されたものの、特例の適用が取り消されたことに伴い、相続人の父の亡くなった日の属する所得税について受けた更生処分に関して、納税義務を承継した相続人が処分を不服として提起していた訴訟の控訴審。
 一審の東京地裁は、課税当局の更生処分を適法とする判決を行い、相続人は控訴していたが、今般、東京高裁第20民事部の春日通良裁判長も地裁の判断を踏襲し課税当局の処分を支持、想像人の控訴を棄却する判決を行った。
 現在、公益法人は新しい制度に以降の最中であるが、公益法人に携わる関係者は、判決内容を確認しておきたい。


◆ 財団法人に贈与した株式の売却が問題に


 事案において、相続人の父は会社株式を財団法人に対し贈与し、公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税特例の適用を受けていた。
 その後、相続人の父が亡くなったが、財団は相続人の父が亡くなった年中にその株式を売却した。
 これに対して課税当局は、財団法人が株式を譲渡したことにより、事業の用に供されなくなったことは明らかとして、相続人の父が亡くなった日の属する年の所得税について、その株式の贈与に係る譲渡所得の金額を加算の上、更生処分を行った。
 納税義務を承継した相続人は、この処分を不服として訴訟を提起した。


◆ 寄附財産が当該公益事業の用に供されるか


 租税特別措置法40条では、国や公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税を規定している。
 これは、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについては、その財産の贈与、遺贈がなかったものとみなし、所法59条1項1号のいない譲渡所得課税の適用を行わないこととする規定。
 措令25条の17には、事業供用要件として、贈与等があった日以後2年を経過するまでの機関内に、その法人の事業の用に供されている。
 また、措置法通達40−9では、その要件の一つである、財産が公益事業の用に供されるかどうかの判定について、その「財産そのものが、直接、当該公益事業の用に供されるかどうかにより行うものとする。」とし、「株式、著作権などのようにその財産の性質上その財産を直接公益事業の用に供することができないものである場合には、各年の配当金、印税収入などその財産から生ずる果実の全部が当該公益事業の用に供されるかどうかにより、当該財産が当該公益事業の用に供されるかどうかを判定して差し支えないものとして取り扱う。」としている。


◆ 一審に続いて更生処分を支持


 一審の東京地裁は、措令25条の17の文言と、この譲渡所得等の非課税の適用がみなし譲渡所得課税の例外として規定されているという性格からすると、寄附された財産を譲渡し換価することによって公益法人等が取得した金銭自体がその公益法人の事業の用に供されたとしても、事業供用要件を充足することはないと解することが相当と判断。
 相続人の、換金することを目的とした株式の贈与にも譲渡所得等の非課税特例が適用されるという主張を退けていた。


◆ 高裁も一審に続いて更生処分を支持


 これに対し、二審の東京高裁も課税当局の処分を支持、相続人の控訴を棄却している。
 高裁は、そもそも株式は、その性質上、直接公益事業の用に供することができないものの、果実である配当金が継続的に公益事業の用に供されれば、株式そのものが公益事業の用に供されたものと同視できることから、非課税特例の適用を受けることができるとした。
 そして、株式が譲渡されれば、今後、配当金が公益事業の用に供されることはなくなるのであるから、非課税特例の適用を受けるべきでないことは、その制度の趣旨にかなうとした。
 その上で交換価値を目的とする金融資産である株式について、譲渡所得の非課税の承認の取消しは適用されないとする、相続人の主張は、立法論としてはともかく、法解釈としては採用することができないと結論づけている。



       (以上参考;週刊「税務通信」第3130号)
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