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M&Aニュース

                                               2010年10月07日
 




 

   
 東京地裁 粉飾決算による棚卸商品過大計上損
       に対する更生を支持 
            
    
   
 
過去の粉飾による損失はその後の事業年度の損失には該当せず      
          

     
 東京地裁は、企業が過去に行った粉飾決算により水増しした棚卸金額を、その後の事業年度において損失として計上した経理処理に対する課税当局の更生処分を正当なものとする判決を行った(平成22年9月10日判決言渡 平成21年(行ウ)第380号)。
 これは、過去に過大に棚卸商品を計上する粉飾決算を行っていた企業が、その後の事業年度において、損益計算書の特別損失の項目に棚卸商品過大計上損の科目でその粉飾決算を行った金額を計上し、その金額を損金の額に算入して法人税を申告したが、課税当局は損金算入を認めず更生処分を行ったため、企業が処分の取消しを求めて提起した訴訟。
 東京地裁民事第38部は、過去の粉飾決算により棚卸商品過大計上となった金額は、その後の事業年度の損失には該当しないことから、企業の請求は理由がないとして請求を棄却している。
 なお、この事案は控訴されている。


◆ 過去の粉飾決算による過失の過大計上処理が問題に


 事案において問題となったのは、企業が過去の事業年度で粉飾決算を行って、棚卸金額を水増しし、決算上の売上原価の額を実際の売上原価より少なく計上していた金額を、その後の事業年度において、損金の額に算入した経理処理。
 課税当局は、「各事業年度の所得金額の計算」を規定している法法22条の、3項1号にいう売上原価の額は、その事業年度の期首商品棚卸及びその期の仕入れ高から期末商品棚卸高を控除することで算定されるものと主張。
 「過去の事業年度」において、所得金額を過大に計上することにより売上原価を実際よりも少なく計上していた金額は、「過去の事業年度」の収益に係る売上原価として、損金の額に計上されるべきものであり、「その後の事業年度」の収益にかかる売上原価として、損金の額に算入されるものでないとした。
 また、計上された損失は「その後の事業年度」の販売費その他の費用に該当しないことは明らかであり、法法22条3項2号にも該当しないとした。
 さらに、棚卸商品過大計上損は、粉飾経理を修正する調整科目に過ぎず、「その後の事業年度」において何ら実質的損失が生じているわけではないので、法法22条3項3号に規定する損失にも該当しないとした。


◆ 国税通則法70条に違反するか


 東京地裁は判決で企業の請求を棄却しているが、その主な理由は次のとおりとされる。
 まず、課税当局の更生処分が国税通則法70条の更生の期間制限に違反するとの主張については、課税当局の更生処分は通則法70条2項3号に規定する「純損失等の金額で当該課税期間において生じたものを減少させる更生」に該当することから、その更生に係る期間は7年であり、更生はその期間制限内にされていると判断された。


◆ 法法21条との関連


 次に、課税当局の更生処分は、過年度分を一括更生したものであり、事業年度課税を規定している法法21条に違反する、との主張について検討している。
 判決では、課税当局の更生処分は問題となった経理処理の行われた事業年度の課税標準である所得金額を算出するに当たり、損金に算入された損失はその事業年度の損金に算入されるべきではないとして減算し、その事業年度の所得の金額を算出して課税標準としており、更生処分は法法21条に違反するものではないと判断している。


◆ 青色欠損金に当たるか


 企業は問題となった経理処理により計上された損失は、法法57条にいう青色欠損金であり、損金計上が認められるべきとも主張している。
 この点について判決では、計上された損失は「過去の事業年度」の粉飾決算を是正するために一括して損金として計上されたものであり、更生処分の行われた事業年度における法法57条1項により繰越控除が認められる欠損金額に当たらないと判断している。


◆ 法法129条は粉飾決算をした法人の更生の根拠規定か


 また、企業は課税当局の更生処分は、法法22条3項ではなく法法129条2項により行うべきもので、法令の適用を誤っていると主張。
 この点について判決は、課税当局の更生処分は、問題となった経理処理により計上された損金が、更生処分の行われた事業年度の収益に係る売上原価に当たらないことを理由に行われていることから、法法22条3項に基づくものということができ、法令の適用の誤りはないと判断している。





       (以上参考;週刊「税務通信」第3133号)
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