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M&Aニュース

                                               2010年10月19日
 




 

   
       22年度税制改正に対応した
             
 基礎からわかる解散・清算・残余財産確定Q&A
            
    その1
 
     
 
                    
          

     
 <改正の概要>

 Q1 清算所得税が廃止されたそうですが、これにより今後、どのような問題が生じることになるのでしょうか?
 
 A 22年度改正に伴い、法人が解散した場合にのみ適用される特例的な所得計算規定「清算所得課税」制度が廃止されました。この見直しにより、今後、解散後に債務免除を受けたような場合は、その債務免除益に課税が生じる可能性があります。
 従前、清算所得税の下では、清算法人は「残余財産の価額−(解散時の資本金等の額+解散時の利益積立金額等)=清算所得」の算式で清算所得を求める財産法計算を行っていましたが、今後は、清算法人であっても通常の所得計算で用いられる損益法計算(「収益(益金)−費用(損金)=所得」)で所得を求めることと見直されました。
 結果、例えば、債務免除益が100、残余財産が0、解散時の資本金等の額0、解散時の利益積立金額等0となった場合(税務調整なし。他に損益は生じていない)、従前の財産法ベースであれば「残余財産の価額0−(解散時の資本金等の額0+解散時の利益積立金額等0)=清算所得となり、課税は生じません。債務免除益100は清算所得の算定において考慮されないのです。しかし、損益法ベースになると、「益金(債務免除益)100−損金0=所得100」となり、課税が生じます。残余財産が0であっても課税されるということです。
 同条件の事案であっても、計算方法の変更により、結果的に税負担額が異なる可能性もあるという点にご注意ください。

 Q2 今後は、必ず、債務免除益に課税が行われるということでしょうか。

 A 必ずしも、債務免除益等に課税が行われるわけではありません。22年度税制改正では上記のような問題が起こり得る点に配慮し、「清算所得課税の廃止」と同時に、「期限切れ欠損金の利用範囲拡大を行っているからです。
 「期限切れ欠損金の利用範囲拡大」とは、法人が解散した場合、一定の要件の下で、期限切れ欠損金の利用を認めるとする見直しです。
 例えば、A社が解散したことにより100の債務免除が生じたが、青色欠損金が40、期限切れ欠損金が60あるような場合(他に損益はなし。税務調整もなし)、従前は免除益100と青色欠損金40しか相殺できませんでしたが、今後は期限切れ欠損金の利用範囲拡大により、期限切れ欠損金60も免除益と相殺可能となるため、「益金(免除益)100−青色欠損金40−期限切れ欠損金60=所得0」の算式により、所得は0となります。結果的に、本事例では税負担が生じないこととなります(期限切れ欠損金利用に係る詳細は後述)。

 Q3 清算所得課税はもう廃止されたのですか。

 A 22年度税制改正で、清算所得課税の制度自体は廃止済みですが、その改正法の適用は経過措置により、平成22年10月1日以後に解散した場合からとされています(22改正法附則10)。
 ちなみに、清算所得課税について、旧法人税法では92条から120条まで主要な規定を設けていましたが、22年度改正税法では、これらの規定は全て削除されています。

 Q4 法人が解散した場合、従前はその解散をもって事業年度を分断する「みなし事業年度」の規定の適用がありましたが、これは今後も変更はないのですか。

 A 今後も変更はありません(法法14、会社法494、法基通1−2−7)。
 解散前後の事業年度を大別すると、法人が期中に解散した場合、@その法人の「事業年度開始の日(=期首)」から「解散の日」までの期間を解散事業年度、Aその「解散の日の翌日」から「1年を経過する日」までの各期間を清算事業年度、B「残余財産の確定日」の属する期間を最後事業年度、と一般的に呼称します。
 例えば、3月決算法人が平成22年12月末に解散し、24年6月30日に残余財産を確定した場合、平成22年4月1日から平成22年12月31日までの期間が「解散事業年度」に、平成23年1月1日から平成23年12月31日までの期間が「清算事業年度」に、平成24年1月1日から平成24年6月30日までの期間が「最終事業年度」となります。

<解散事業年度編>

 Q5 解散事業年度の所得計算について変更はありますか。

 A 従前から損益法ベースで計算を行っており、この点は今後も変わりません。前述のように、解散事業年度とは「事業年度開始日」から「解散の日」までの期間を指すものであり、元々、清算所得税の適用がない期間でした。
 このため、清算所得税が廃止されても、基本的に解散事業年度に係る改正点は少ない模様です。


 Q6 解散事業年度について、改正点は全くないということですか。

 A 基本的に見直しは少ない模様ですが、何一つ改正がないというわけでもありません。
 例えば、3月決算法人が仮装経理により法人税を過大納付していた場合、所定の手続きの下、その過大納付分は即座には還付されず、原則として5年間は順次控除され、さらに残額があれば「申告期限」後に還付されることとなりますが、この点につき、従前は解散した場合にはその「解散事業年度」の申告期限到来後に残額を還付するとしていましたが、(旧法法134の2)、今後は「最後事業年度(=残余財産確定日の属する事業年度)」の申告期限到来後に残額を還付することと見直されています(法法135B一)。
 単純に解散しただけでは、過大納付分の控除後残額は還付されないこととされた点にご注意下さい。


 Q7 Q6の例のように、仮装経理による法人税過大納付分の還付事由から「通常の解散」が除かれました。一方、「破産」で解散した場合等にはその決定年度に係る申告期限到来時に還付を行い、「特別清算」の場合等には、その決定日以後1年以内に還付請求を行えば還付を受けることができるとされました。破産も特別清算も同じ清算型法的整理の一手法ですが、なぜこのように扱いが異なるのですか。

 A 「破産手続開始の決定」があった場合は、事業年度変更届出を所轄の税務署長に提出することとされているため、その発生事実を税務当局側が把握できるのに対し(法法135B)、「特別清算」の場合は、税務署長が必ずしもその発生事実を把握できるとは限りません(法法135C、法令175A一)。
 このため、ご質問のように、破産と特別清算は清算型法的整理の一種ではありますが、税法上は扱いを異なるものと整理しているのです。

 Q8 解散事業年度でも期限切れ欠損金は利用できるのですか。

 A 利用できません。法人税法第59条第3項では期限切れ欠損金を「適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する」と規定しており、この「適用年度」とは「その清算中に終了する事業年度」を指すと明確にしているからです。
 結果、期限切れ欠損金の利用はあくまでも清算事業年度に限定されることとなります。


 Q9 解散事業年度の申告期限について見直しはないのですか。

 A 見直しはありません。従前、解散事業年度に係る申告期限は「各事業年度終了の日」の翌日から原則2ヶ月以内とされていましたが(旧法法74@)、この点は今後も変わらず、「各事業年度終了の日」の翌日から原則2ヶ月以内となります(法法74@)。


 Q10 解散事業年度の申告期限についても延長特例は適用されますか。

 A 従前と同様、適用されます。従前、会計監査等を要するため申告期限内(2ヶ月以内)に決算が確定しない場合には、所轄の税務署長の承認の下、その申告期限を1ヶ月延長することができるとされていましたが(旧法法75の2@)、今後も、この点は変更がありません(法法75の2@)。


 Q11 解散事業年度に係る申告書の添付書類について変更はありますか。

 A 従前、申告書の添付書類としては、組織再編の場合を除き、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書とされていましたが(旧法規35)、基本的にこの点は変わりません(法規35)。







       (以上参考;週刊「税務通信」第3132号)
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