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M&Aニュース

                                               2010年10月21日
 




 

   
       22年度税制改正に対応した
             
 基礎からわかる解散・清算・残余財産確定Q&A
            
    その3
 
     
 
                    
          

     
 <清算事業年度編(承前)>

 Q27 Q22では、期限切れ欠損金の額は、別表五(一)の期首利益積立金額のマイナス数値を利用できるとありますが、この数値全額を期限切れ欠損金として利用できるのですか。

 A 期首利益積立金額のマイナス数値全額を期限切れ欠損金として利用できるわけではありません。正確には、別表五(一)の期首利益積立金額から青色欠損金額等を差し引いた残額を、期限切れ欠損金として利用できます。
 具体的にいうと、別表五(一)の31に期首利益積立金額のマイナス数値として△100があり、別表七(一)の当期控除額の計に10があるならば、別表七(二)のVの27に100、28に10を記載することにより、29その残額90を期限切れ欠損金として利用できます。


 Q28 親会社が100%子会社の資産を時価で買い取った場合には、その際に生じる譲渡損益を繰延べることとなります。
 周知の通り、22年度税制改正では、清算所得課税廃止のほかに、グループ法人税制の導入を行っています。このため、例えば、親会社が100%子会社の資産を買い取ったような場合、その子会社が清算中であるかどうかに関わらず、子会社資産買取りで生じた譲渡損益は繰延べられることとなります。
 なお、繰延べられた譲渡損益は、その子会社の残余財産が確定した段階(最後事業年度)や上記資産を再譲渡等した段階において取り戻されます。


 Q29 子会社資産(譲渡損益調達資産)の買取価額より低かったり、高かったりした場合はどうなりますか。

 A 買取価額が時価より低い場合は、子会社では寄附金、親会社では受贈益の問題が生じ、逆に高い場合は、親会社では寄附金、子会社では受贈益の問題が生じます。
 例えば、親会社Aの清算中の100%子会社Bから土地(帳簿価額100、時価70)を現金で買い取った場合、買取価額が60であったとすると、買取り時において、子会社Bは、会計上は譲渡損40を計上しますが、税務上は帳簿価額100と時価70の差額分30しか譲渡損の計上が認められないため、会計上の譲渡損40と税務上の譲渡損30の差額10は寄附金とされ、損金不算入となります(同時に親会社側では10は受贈益となります)。
 一方、買取価額が80であったとすると、買取り時において、子会社Bは、会計上は譲渡損20を計上しますが、税務上は帳簿価額100と時価70の差額分30の譲渡損を計上することとなるため、会計上の譲渡損20と税務上の譲渡損30の差額10は受贈益とされ、益金不算入となります(同時に親会社側では10は寄附金となります)。


 Q30 清算事業年度に係る申告制限に変更ありますか

 A 変更があります。従前、清算事業年度に係る予納申告期限は「清算中の各事業年度終了の日」の翌日から原則2ヶ月以内としつつ、その2ヶ月以内に残余財産の最後分配等が行われる場合には「その行われる日の前日まで」とされていました(旧法法102)。
 しかし、22年改正で予納申告が廃止されたため、今後「各事業年度終了の日」の翌日から原則2ヶ月以内としつつ、その2ヶ月以内に残余財産の最後分配等が行われる場合には「その行われる日の前日まで」とされていました(旧法法102)。
 しかし、22年度改正で予納申告が廃止されたため、今後は「各事業年度終了の日」の翌日から原則2ヶ月以内に通常の申告を行うこととなります(法法74@)。また、今後は、各清算事業年度においても申告期限の延長特例が適用されます(法法75の2@)。


 Q31 清算事業年度に係る申告書の添付書類は見直されたのですか。

 A 大幅に見直されています。従前の清算事業年度における予納申告では、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書を添付することとされていましたが(旧法規44)、今後は通常の申告を行うこととなるため、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書の添付を要することとなります(法規35)。


 Q32 仮装経理(粉飾決算)法人の解散で債務免除等が生じたような場合にも、期限切れ欠損金は利用できることとなるのでしょうか。

 A ご質問のケースの場合、一定の要件の下、青色欠損金の利用は可能ですが、期限切れ欠損金利用に係る取扱いは未定です。
 なお、この点等に関し、事業再生分野の税務問題を整理・検討する任意団体・事業再生研究機構では、『平成22年度税制改正後の清算中の法人税申告における実務上の取扱いについて』と題する報告書を公表し、「残余財産がないと見込まれる」ことの説明書類の範囲、粉飾決算で架空資産を計上している場合の取扱い、破産開始決定後の破産管財人による法人税申告の扱いなどについて一案を提示しています。


<最後事業年度編>


 Q33 最後事業年度とは「残余財産の確定日」の属する事業年度のことですが、この「確定日」とはどの日が該当するのですか。

 A 従前と同様、個々の事案ごとに判断することになります。実務の上では、残余財産全ての換価が終了した日、租税債務以外の弁済を終了した日、債務弁済を終了した日、清算事務終了に伴い決算報告を行った日などが挙げられます。いずれにしても個別に判断することとなります。


 Q34 最後事業年度の所得計算について変更点はありますか。

 A 大幅に変更されています。従前は、最後事業年度において、財産法ベースの「清算確定申告」を行っていましたが、今後は、清算事業年度と同様、損益法ベースで所得計算を行うこととなります(法人税法上は、「清算事業年度」も「最終事業年度」も清算中に終了する事業年度に変わりがないため、所得計算は同様となります。)


 Q35 最後事業年度でも期限切れ欠損金は利用できますか。

 A 利用できます。最後事業年度において「残余財産がないと見込まれるとき」に該当するのであれば、期限切れ欠損金の李冰が可能です。実務においては、最後事業年度で債務免除益が生じることも多々あるようですので、期限切れ欠損金利用を失念することのないようご注意ください。


 Q36 最後事業年度に係る申告期限に変更はありませんか。

 A 変更はありません。従前、最後事業年度に係る申告期限(清算確定申告の期限)は「残余財産の確定日」の翌日から原則1ヶ月以内とされていましたが(旧法法104)、この点は今後も変わらず、「残余財産の確定日」の翌日から原則1ヶ月以内となります(法法74A)。


 Q37 最後事業年度の申告期限について、延長特例は適用可能ですか。

 A 適用できません。同特例の適用範囲から「残余財産の確定の日の属する事業年度」は除かれています(法法75の2@カッコ書き)。


 Q38 最後事業年度の申告書の添付書類に変更はありますか。

 A 変更があります。従前、清算確定申告書には、貸借対照表、財産目録、解散時から残余財産確定時までの清算に関する計算書を添付することとされていましたが(旧法規48)、今後は申告書に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書を添付することと見直されています(法規35)


 Q39 通常の子会社解散と異なり、100%子会社を解散し残余財産を確定させた場合には、親会社は子会社株式の消滅損を計上できないとされた代わりに、子会社の未処理欠損金を引き継ぐことができるとされたようです。とはいえ、「子会社株式の消滅損の不計上」、「未処理欠損金の引継ぎ」、「期限切れ欠損金の利用範囲拡大」といった聞き慣れない用語の頻出に戸惑い、全体像が整理できません。どのように捉えればよいでしょうか。

 A ご質問のとおり、22年度税制改正では、「グループ法人税制の導入」により、100%子会社を解散し残余財産を確定させたような場合、親会社は子会社株式の消滅損を計上できないこととされました(法法61の2O)。
 例えば、親会社AがB社株式の発行株式全てを200で取得してB社を100%子会社化したが、22年9月30日までに子会社Bを解散し、その後残余財産を確定させた場合(残余財産の分配はなし)、親会社Aは200の消滅損を損金算入できました(旧法法61の2@)。しかし、22年10月1日以後解散分からはグループ法人税制の導入により、消滅損を一切計上できないこととされたのです。ただし、消滅損の計上が認められなくなった代わりとして、一定の要件の下、親会社は子会社の未処理欠損金を引き継ぐことができることとされ(法法57A)、税負担が改正前後で大きく変動することのないよう配慮されています。
 ところで、実務家の中には、「期限切れ欠損金の利用範囲拡大」、「未処理欠損金の引継ぎ」、「子会社株式の消滅損の不計上」といった用語の頻出に戸惑い、全体像が把握できないとの声も実際にあります。そこで、この点を下記の表のように整理しました。ご覧の通り、親子会社間に完全支配関係があるか否かで、適用関係が異なってくるのでご注意下さい。

<表>親会社が子会社を解散し、残余財産を確定させた場合の適用関係
期限切れ欠損金の利用 未処理欠損金の引継ぎ 子会社株式消滅損の計上
完全支配関係がない場合 子会社で○ 親会社で× 親会社で○
完全支配関係がある場合 子会社で○ 親会社で○ 親会社で×


 Q40 どのような要件をクリアすれば、親会社は未処理欠損金を引き継げるのですか。

 A @残余財産確定日の時点で完全支配関係があり、A残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続していれば、未処理欠損金等を引き継ぐことができます。
 つまり、@の要件をクリアしていない限り、未処理欠損金は一切引き継げません。また、仮に@の要件はクリアしても、Aの要件をクリアしていない場合には、引継ぎ金額に制限が生じることとなります。


 Q41 「残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続」していれば引き継げるとのことですが、これは単純に「5年間」支配関係が継続していれば引き継げるということですか。

 A そうではありません。場合によりますが、ちょうど「5年間」ではなく、「5年を超えた期間」において支配関係が継続しているかどうか判定しなければならない場面もあります。
 これは法人税法上、未処理欠損金を引き継げるか否かについて、「残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前の日・・・・から継続して支配関係がある場合として政令で定める場合」(法法57B)には、引継ぎ制限はないと規定している点を根拠とします。
 例えば、3月決算法人が期末(23年3月31日)に残余財産を確定した場合、「残余財産確定の日(23年3月31日)の翌日(23年4月1日)の属する事業年度開始の日(23年4月1日)の5年前の日(18年4月1日)・・・・から継続して支配関係」があるかどうかを判定することとなるので、支配関係継続の判定期間は「18年4月1日から23年4月1日」までのちょうど5年間となります。
 一方、3月決算法人が期中(23年12月31日)に残余財産を確定した場合には、「残余財産確定の日(23年12月31日)の翌日(24年1月1日)の属する事業年度開始の日(23年4月1日)の5年前の日(18年4月1日)・・・・から継続して支配関係」があるかどうかを判定することとなるので、支配関係継続の判定期間は「18年4月1日から23年12月31日」までの5年9ヶ月となります。
 残余財産の確定日によっては、支配関係継続の判定期間がちょうど5年となるケースもあれば、5年を超えるようなケースもあるということです。単純に「5年間だけを見ればよい」と誤解することのないようご注意下さい。


 Q42 しかし、法人税法第57条第3項第1号では、「最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度」前に生じた未処理欠損金は引き継げないとしています。ここでいう年度が「最後事業年度」を示しているとすると、引継ぎ制限自体が生じないと思うのですが。

 A 「最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度」とは、「最後事業年度」ではなく、「残余財産確定日までの間、一番最後に新たな支配関係が生じた日の属する事業年度」を指します。
 具体的に言うと、@支配関係継続の判定期間(=残余財産確定日以前、最低5年間)において支配関係が一度途切れ、再度、新たな支配関係が生じている場合には、その新たな支配関係が生じている場合には、その新たな支配関係が生じた年度(支配関係事業年度)が該当し、これより前に生じた未処理欠損金は引き継げないこととなります。Aまた、新たな支配関係が生じた年度が複数あるような場合には、そのうち一番新しい年度(支配関係事業年度)が該当し、それより前に生じた未処理欠損金は引き継げません。


 Q43 実務では、合弁会社の解散に伴って、出資比率の高い会社が、出資比率の低い会社の出資分を買い取り、合弁会社を100%子会社化するようなケースがあります。このような場合、税務調査等で出資比率を意図的に操作したのではないかと指摘され、未処理欠損金の引継ぎが制限されることとなる可能性もあるでしょうか。

 A 出資比率変動を理由に未処理欠損金の引継ぎが制限されることはないようです。残余財産確定に伴って未処理欠損金を引継げるかどうかは、@残余財産確定日時点で100%資本関係(完全支配関係)があるか、A残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続等しているか、の形式基準をクリアしているか否かで判断するものだからです。


 Q44 未処理欠損金の引継ぎは、「孫会社→子会社→親会社」という流れでも認められるのでしょうか。それとも「子会社→親会社」という流れに限定されるものなのでしょうか。

 A 未処理欠損金の引継ぎは、「子会社→親会社」という流れに限定されるものではなく、「孫会社→子会社→親会社」という流れでも認められます。ただし、新設法人を介在させて引き継ぐようなケースでは、制限が生じることもあいrます。


 Q45 100%子会社の解散後に債務免除を行い、その債務免除が親会社側で寄附金、子会社側で受贈益とされた場合、子会社側で受贈益以外に一切益が生じなかったとすると、親会社は子会社の未処理欠損金を丸々引き継ぐことができるのですか。

 A 丸々引き継ぐことが可能です。ご質問の前提で、債務免除が親会社側で寄附金とされ損金不算入となり、これを受領した子会社側で受贈益とされ益金不算入とされた場合(支配関係は途切れることなく継続していると仮定)、仮に子会社側で受贈益以外に一切益が生じなかったとすると、子会社では未処理欠損金を使用する機会がありません。
 このため、結果的に、親会社は子会社の未処理欠損金全額を引き継ぐことが可能となります。


 Q46 100%子会社ではない子会社を解散させた場合は、従前と同様、親会社は子会社株式の消滅額を計上できますか。

 A 従前と同様、計上できます。例えば、親会社AがB社株式の発行済み株式全てを200で取得してB社を100%子会社化しtが、その後、子会社Bを解散し残余財産を確定させた場合、残余財産の分配がないのであれば、親会社Aは200の消滅損を損金算入できます。また、みなし配当がない前提で、残余財産が10分配されたような場合は、190の消滅損を損金算入できることとなります(法法61の2@)


 Q47 日本の親会社が、外国に所在する100%子会社を解散させた場合、子会社株式の消滅損を計上できますか。

 A 100%子会社が外国子会社であった場合、親会社は、その外国子会社株式の消滅損を計上できます。
「子会社株式の消滅損の不計上」規定は、子会社が「内国法人」の場合に限られ、子会社が「外国法人」の場合には適用されません(法法61の2O)。


 Q48 親会社は、100%子会社の未処理欠損金だけではなく、期限切れ欠損金も引き継ぐことができるのですか。

 A 親会社が引き継ぐことができるのは、子会社の未処理欠損金等のみです。子会社の期限切れ欠損金を引き継ぐことはできません。


 Q49 残余財産の分配を行った場合、未処理欠損金の引き継ぎ金額に影響はありますか。

 A 影響はありません。子会社の未処理欠損金を引き継げるかどうかは、あくまでも、@残余財産確定日時点で100%資本関係があるか、A残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続等しているか、をクリアしているか否かで判断するものです。


 Q50 清算法人に債務免除益が生じ課税が行われたものの、納税資金がないような場合、第二次納税義務の問題が生じることになるのでしょうか。

 A 場合によっては、精算人や同族会社のオーナーなどに第二次納税義務が生じることもあります。
 例えば、清算所得にあっかる納付税額があるにも関わらず、これを納付しないまま残余財産の分配を行った場合には、その分配した「財産の価額」を上限として、清算人やその分配を受けた者に第二次納税義務が生じます(残余財産の分配がない場合は第二次納税義務は生じません)(徴法37)。


 Q51 100%子会社の業績が著しく悪化した場合、従前は、親会社は会計上その期で子会社株の減損損失を計上する一方、税務上は子会社の残余財産確定時に初めて消滅損の損金算入を認めるとしていたため、繰延税金資産を計上することが多かったようです。しかし、今後は子会社株式の消滅損の計上が認められなくなったので、繰延べ税金資産の取崩しを検討する必要があると思うのですが、この点につき何か公表資料などはあるのでしょうか。

 A 現時点では公表資料等は出ていませんが、一般的に実務家の多くは、「繰延税金資金の取り崩し」の検討が必要であると考えているようです。ただし、ここで問題となるのは、どれくらいの取り崩しを行うかという点です。
 前述のように、22年度改正では、子会社株式の消滅損の計上を認めないこととする一方、原則として子会社の未処理欠損金の引継ぎを認めるとする規定を設けているからです。
 例えば、@子会社株式の消滅損として100を損金算入できなくなった代わりに、未処理欠損金80を引き継げるのであれば、その差額20に応じた分だけ取崩しを行う一方で、A子会社株式の消滅損として100損金算入できなくなった代わりに、未処理欠損金100を引き継げるのであれば、結果的に滅税効果は変わらないため、取崩し自体を要しないと考える向きもあるようです。





       (以上参考;週刊「税務通信」第3134号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






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