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期限切れ欠損金の利用 | 未処理欠損金の引継ぎ | 子会社株式消滅損の計上 | |
完全支配関係がない場合 | 子会社で○ | 親会社で× | 親会社で○ |
完全支配関係がある場合 | 子会社で○ | 親会社で○ | 親会社で× |
Q40 どのような要件をクリアすれば、親会社は未処理欠損金を引き継げるのですか。
A @残余財産確定日の時点で完全支配関係があり、A残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続していれば、未処理欠損金等を引き継ぐことができます。
つまり、@の要件をクリアしていない限り、未処理欠損金は一切引き継げません。また、仮に@の要件はクリアしても、Aの要件をクリアしていない場合には、引継ぎ金額に制限が生じることとなります。
Q41 「残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続」していれば引き継げるとのことですが、これは単純に「5年間」支配関係が継続していれば引き継げるということですか。
A そうではありません。場合によりますが、ちょうど「5年間」ではなく、「5年を超えた期間」において支配関係が継続しているかどうか判定しなければならない場面もあります。
これは法人税法上、未処理欠損金を引き継げるか否かについて、「残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前の日・・・・から継続して支配関係がある場合として政令で定める場合」(法法57B)には、引継ぎ制限はないと規定している点を根拠とします。
例えば、3月決算法人が期末(23年3月31日)に残余財産を確定した場合、「残余財産確定の日(23年3月31日)の翌日(23年4月1日)の属する事業年度開始の日(23年4月1日)の5年前の日(18年4月1日)・・・・から継続して支配関係」があるかどうかを判定することとなるので、支配関係継続の判定期間は「18年4月1日から23年4月1日」までのちょうど5年間となります。
一方、3月決算法人が期中(23年12月31日)に残余財産を確定した場合には、「残余財産確定の日(23年12月31日)の翌日(24年1月1日)の属する事業年度開始の日(23年4月1日)の5年前の日(18年4月1日)・・・・から継続して支配関係」があるかどうかを判定することとなるので、支配関係継続の判定期間は「18年4月1日から23年12月31日」までの5年9ヶ月となります。
残余財産の確定日によっては、支配関係継続の判定期間がちょうど5年となるケースもあれば、5年を超えるようなケースもあるということです。単純に「5年間だけを見ればよい」と誤解することのないようご注意下さい。
Q42 しかし、法人税法第57条第3項第1号では、「最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度」前に生じた未処理欠損金は引き継げないとしています。ここでいう年度が「最後事業年度」を示しているとすると、引継ぎ制限自体が生じないと思うのですが。
A 「最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度」とは、「最後事業年度」ではなく、「残余財産確定日までの間、一番最後に新たな支配関係が生じた日の属する事業年度」を指します。
具体的に言うと、@支配関係継続の判定期間(=残余財産確定日以前、最低5年間)において支配関係が一度途切れ、再度、新たな支配関係が生じている場合には、その新たな支配関係が生じている場合には、その新たな支配関係が生じた年度(支配関係事業年度)が該当し、これより前に生じた未処理欠損金は引き継げないこととなります。Aまた、新たな支配関係が生じた年度が複数あるような場合には、そのうち一番新しい年度(支配関係事業年度)が該当し、それより前に生じた未処理欠損金は引き継げません。
Q43 実務では、合弁会社の解散に伴って、出資比率の高い会社が、出資比率の低い会社の出資分を買い取り、合弁会社を100%子会社化するようなケースがあります。このような場合、税務調査等で出資比率を意図的に操作したのではないかと指摘され、未処理欠損金の引継ぎが制限されることとなる可能性もあるでしょうか。
A 出資比率変動を理由に未処理欠損金の引継ぎが制限されることはないようです。残余財産確定に伴って未処理欠損金を引継げるかどうかは、@残余財産確定日時点で100%資本関係(完全支配関係)があるか、A残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続等しているか、の形式基準をクリアしているか否かで判断するものだからです。
Q44 未処理欠損金の引継ぎは、「孫会社→子会社→親会社」という流れでも認められるのでしょうか。それとも「子会社→親会社」という流れに限定されるものなのでしょうか。
A 未処理欠損金の引継ぎは、「子会社→親会社」という流れに限定されるものではなく、「孫会社→子会社→親会社」という流れでも認められます。ただし、新設法人を介在させて引き継ぐようなケースでは、制限が生じることもあいrます。
Q45 100%子会社の解散後に債務免除を行い、その債務免除が親会社側で寄附金、子会社側で受贈益とされた場合、子会社側で受贈益以外に一切益が生じなかったとすると、親会社は子会社の未処理欠損金を丸々引き継ぐことができるのですか。
A 丸々引き継ぐことが可能です。ご質問の前提で、債務免除が親会社側で寄附金とされ損金不算入となり、これを受領した子会社側で受贈益とされ益金不算入とされた場合(支配関係は途切れることなく継続していると仮定)、仮に子会社側で受贈益以外に一切益が生じなかったとすると、子会社では未処理欠損金を使用する機会がありません。
このため、結果的に、親会社は子会社の未処理欠損金全額を引き継ぐことが可能となります。
Q46 100%子会社ではない子会社を解散させた場合は、従前と同様、親会社は子会社株式の消滅額を計上できますか。
A 従前と同様、計上できます。例えば、親会社AがB社株式の発行済み株式全てを200で取得してB社を100%子会社化しtが、その後、子会社Bを解散し残余財産を確定させた場合、残余財産の分配がないのであれば、親会社Aは200の消滅損を損金算入できます。また、みなし配当がない前提で、残余財産が10分配されたような場合は、190の消滅損を損金算入できることとなります(法法61の2@)
Q47 日本の親会社が、外国に所在する100%子会社を解散させた場合、子会社株式の消滅損を計上できますか。
A 100%子会社が外国子会社であった場合、親会社は、その外国子会社株式の消滅損を計上できます。
「子会社株式の消滅損の不計上」規定は、子会社が「内国法人」の場合に限られ、子会社が「外国法人」の場合には適用されません(法法61の2O)。
Q48 親会社は、100%子会社の未処理欠損金だけではなく、期限切れ欠損金も引き継ぐことができるのですか。
A 親会社が引き継ぐことができるのは、子会社の未処理欠損金等のみです。子会社の期限切れ欠損金を引き継ぐことはできません。
Q49 残余財産の分配を行った場合、未処理欠損金の引き継ぎ金額に影響はありますか。
A 影響はありません。子会社の未処理欠損金を引き継げるかどうかは、あくまでも、@残余財産確定日時点で100%資本関係があるか、A残余財産確定日以前の最低5年間、支配関係が継続等しているか、をクリアしているか否かで判断するものです。
Q50 清算法人に債務免除益が生じ課税が行われたものの、納税資金がないような場合、第二次納税義務の問題が生じることになるのでしょうか。
A 場合によっては、精算人や同族会社のオーナーなどに第二次納税義務が生じることもあります。
例えば、清算所得にあっかる納付税額があるにも関わらず、これを納付しないまま残余財産の分配を行った場合には、その分配した「財産の価額」を上限として、清算人やその分配を受けた者に第二次納税義務が生じます(残余財産の分配がない場合は第二次納税義務は生じません)(徴法37)。
Q51 100%子会社の業績が著しく悪化した場合、従前は、親会社は会計上その期で子会社株の減損損失を計上する一方、税務上は子会社の残余財産確定時に初めて消滅損の損金算入を認めるとしていたため、繰延税金資産を計上することが多かったようです。しかし、今後は子会社株式の消滅損の計上が認められなくなったので、繰延べ税金資産の取崩しを検討する必要があると思うのですが、この点につき何か公表資料などはあるのでしょうか。
A 現時点では公表資料等は出ていませんが、一般的に実務家の多くは、「繰延税金資金の取り崩し」の検討が必要であると考えているようです。ただし、ここで問題となるのは、どれくらいの取り崩しを行うかという点です。
前述のように、22年度改正では、子会社株式の消滅損の計上を認めないこととする一方、原則として子会社の未処理欠損金の引継ぎを認めるとする規定を設けているからです。
例えば、@子会社株式の消滅損として100を損金算入できなくなった代わりに、未処理欠損金80を引き継げるのであれば、その差額20に応じた分だけ取崩しを行う一方で、A子会社株式の消滅損として100損金算入できなくなった代わりに、未処理欠損金100を引き継げるのであれば、結果的に滅税効果は変わらないため、取崩し自体を要しないと考える向きもあるようです。
(以上参考;週刊「税務通信」第3134号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)
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