2010年10月28日
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東京高裁も適格現物出資として
DESの債務消滅益を認定
納税者側の上告により最高裁の判断
が注目されることに
株式会社の債務を株式に転化するいわゆるDES(Debt Equity Swap:デット・エクイティ・スワップ)により、債務消滅益が生ずるか否かを主な争点とした訴訟の控訴審で、東京高裁は一審の東京地裁に引き続き、課税当局の更生処分を適法とする判断を行った(平成22年9月15日判決言渡 平成21年(行コ)第206号)。
事案は、関連会社から受けた債権の現物出資に対し、新株を発行したDES取引について、債務消滅益が生じていることから、その計上漏れがあるとして課税当局が行った更生処分等に対し提起された。
一審の東京地裁では、事案におけるDESは、適格現物出資に該当し、債権の評価を券面額又は評価額のいずれかで行うかという議論は影響を及ぼさず、現物出資の直税の帳簿価額により譲渡をしたものとして所得金額を計算することとなり、債務消滅益が発生したものと認められる、として課税当局の更生処分を支持する判断が示された。
今般、東京高裁第12民事部の梅津和宏裁判長は、二審における納税者の主張は一審の主張の繰り返しか、控訴人独自の見解に基づき違法性を主張するものであり、採用できないとして納税者の控訴を棄却した。
なお、この事案は上告されており、最高裁にその判断が委ねられている。
◆ 一審は適格現物出資として直前の帳簿価額で所得計算
一審では、事案におけるDESは、適格現物出資に該当し、現物出資の直前の帳簿価額により譲渡をしたものとして所得金額を計算することから、債務消滅益が発生したものと認められるとして、課税当局を支持する判断が示されている。
また、DESについては、法令上、何らの規定は設けられておらず、平成18円税制改正前に、DESについては一般的な税務上の取扱いは明確になっていないとした。
ただ、この事案においては、適格現物出資であることから、債権の評価を券面額又は評価額のいずれかで行うかという議論は影響を及ぼさないとしている。
◆ DESを分解して損益取引とすることは許されない
控訴審において、納税者は、DESは負債(債務)の移転を受けるもので、資産の移転を受けるものではないから、法人税法等の関係法令を適用することはできないと主張。
また、DES取引を、現物出資、混同による消滅、新株の発行というように分解し、その一部を法人税法22条2項所定の損益取引とすることは許されないとも主張した。
◆ 資本等取引以外の取引として益金の額に算入できる
これに対し、課税当局は、法人税法22条2項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と規定し、これは実現した利益は原則としてすべて益金に含まれるとして、所得概念を包括的に構成する趣旨であるとされており、また、無償による資産の譲受けその他の取引からも収益g生ずると定めていることから(債務免除益、株式の定額譲受けの倍の受贈益など)、無償の経済的価値の流入が広く益金に含まれると解すべきとした。
そして、混同による債務の消滅が法人税法上の資本等取引に該当しないものである以上、資本等取引以外の取引として、その債務消滅益を益金の額に算入することについて、違法はないと主張した。
◆ 既に最高裁に上告
これらの主張に対し、東京高裁は、二審における納税者の主張は、一審の主張の繰り返しか、法人税等に関する控訴人独自の見解に基づき一審判決の認定判断の違法を主張するものであり、二審における新たな証拠を併せ考慮しても、納税者の主張は採用できないとして、納税者の控訴を棄却している。
なお、この事案は上告され、最高裁にその判断が委ねられていることから、その動向が注目されている。
(以上参考;週刊「税務通信」第3135号)
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