運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2010年11月17日
 




 

   
     建設業者等に係る取り扱い
              組織再編関係で留意すべき点も
 
     
  
          

     
 
 国税庁が先般更新した質疑応答事例は、納税者の参考に資する目的で道庁HPに掲載されているものだが、この中には、特に参考になると見られる項目もある。以下では、法人税関係の3つの事例を取り上げる(下記の【】内の標記はHP内の目次タイトル、数値は番号を示す)。


◆ 住宅瑕疵担保責任保険の保険料等に係る税務上の取り扱い【保険料等4】


 21年10月1日から「住宅瑕疵担保責任保険制度」が施行されたことを受け、本事例では、その支払い者側に係る法人税上の扱いなどを例示している。同保険の支払い者(加入義務者)には、新築住宅の引渡しを行う建設業者・宅地建物取引業者の多くが含まれるため、その影響は少なくないと見る向きもあるようだ。
 同保険の仕組みは、例えば、@注文住宅で、その請負人(建設業者)から発注者に物件の引渡しが行われる場合は、その「請負人(建設業者)」に、A分譲住宅で、建設業者から売主(宅建業者)を経由して引渡しが行われる場合には、その「売主(宅建業者)」に、B賃貸住宅で、その請負人(建設業者)から発注者(大家)に引渡しが行われる場合には、その「請負人(建設業者)」に、それぞれに保険加入の義務が生じるというもの。
 この保険について、引き受け側(保険法人側)の所得計算に係る取り扱いは、先般公表された文書回答で整理されたところだが(22年6月10日回答)、本事例はこれに関連して、保険料等の支払者側(建設業者や宅建業者)に係る取り扱いについて整理を行っている。
 具体的には、支払保険料については、原則として前払費用となるが、継続適用を前提に、保険期間開始日を含む年度で全額損金算入することも認め(消費税上は非課税となり、課税仕入れに該当しない)、検査手数料については、検査完了日を含む年度で全額損金算入することを認めるとしている(消費税上は、検査完了日を含む課税期間で課税仕入れと取扱う)。


◆ 特定役員引継ぎ要件(みなし役員)の判定【組織再編4】


 適格合併を行う場合、共同事業要件の一つである「特定役員引継ぎ要件」(合併前の被合併法人の「特定役員」のいずれかと、合併法人の「特定役員」のいずれかが合併後も特定役員となることが見込まれていること)を満たすことを求められるケースもあるが、本事例では、「特定役員」の範囲に係る一例を示している。
 「特定役員」について、法人税法上は「社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者」が該当すると規定し(法令4の3C二)、取り扱いの上ではこれらに準ずる者とは上記役員と同等に「法人の経営の中枢に参画している者」をいうと定めている(法基通1−4−7)。
 本事例では、被合併法人で「事業本部長」として経営の中枢に参画している者が、合併後も「事業本部長」としての地位に留まり会社法上の役員に就任しない場合であっても、引き続き、合併後法人の経営の中枢に参画することが見込まれるならば、「事業本部長」は特定役員に含まれ、「特定役員引継ぎ要件」を満たすとしたケースを例示している。
 この点、実務上も、役員のポストに空きがないような場合には、上記のようなケースが生じることもある。もっとも、「特定役員」に該当するか否かの判定が難しい場面もあり、この際の事務負担等を考慮して、実務では、被合併法人の経営中枢参画者を会社法上の役員として迎え入れるようなケースなども少なからずある模様だ。


◆ 株式の保有関係が変更している場合の青色欠損金額の引継ぎ【組織再編14】


 適格合併時の未処理欠損金等の引継ぎ制限措置は、22年度改正後も基本的には変更はない一方、引継ぎ制限があるか否かの判定基準については明確化が行われているが、本事例ではこの点について一例を示している。
 引継ぎ制限については、従前は、適格合併日前最低5年の間における「特定資本関係事業年度」より前の分等は引継げないとされていたが、22年度改正後は「最後に支配関係があることとなった日」の属する事業年度(=支配関係事業年度)より前の分等は引継げないとされた(法法57B一)。上記最低5年の間に組織再編を繰り返し、適格合併日までに複数の支配関係が生じたような場合、今後は「最後に支配関係があることとなった日」で判定するとされたため、複数ある支配関係発生日のうちいずれか一つでも適格合併日前最低5年より前に生じていれば、引継ぎ制限はないものとされるわけだ。
 この改正を受け、本事例では、@10年前(A社・B社の設立時)からA社・B社がX社がY社に吸収合併され、Bさらにその後、A社がB社を吸収合併する場合(22年10月1日以後の適格合併)、A社・B社の親会社はX社からY社に変わっているものの、A社とB社の「支配関係」が@の10年前に生じていることからすると(適格合併日前最低5年より前に支配関係が生じていることからすると)、A社はB社の青色欠損金を全額引き継げるとする旨を例示している。
 本事例は、先般公表された22年度改正に係る法人税質疑応答事例(22年10月6日)の問7とも関連したものであるが、未処理欠損金の引継ぎ金額に影響を与える可能性があるという点で留意すべき項目だ。







       (以上参考;週刊「税務通信」第3139号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo