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M&Aニュース

                                               2010年12月09日
 




 

   

グループ税制・資本取引関係等 Q&A 1

                   
 
     
      完全支配関係の判断・譲渡損益の繰延べ等
     
        

     
 
 10月1日からグループ法人税制の各種制度の適用が開始され、清算所得課税も廃止となった。国税庁からは既に、これらの制度に関する質疑応答事例が30問近く公表されたものの、実務がスタートしたことで、新たに多くの疑問が生じている模様だ。そこで、グループ法人税制や清算所得課税の廃止、組織再編税制に関する疑問点について、Q&A形式で紹介していく。



<完全支配関係の判定@>
Q1:当社も所属する企業グループ(頂点の親会社は非同族会社)の株式保有状況は従前から、各社の代表取締役社長や専務取締役に、経営に対するインセンティブとして当該会社の株式を2,3株与えて(持株割合0.5%ほど)、残りは、すべて各社の親会社が所有(持株割合99.5%ほど)しています。
 このように、実質的な完全支配関係と同じでも持株割合が100%に満たなければ、完全支配関係に該当しないのでしょうか。

A1:何度もお伝えしていますが、完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の「全部」を直接・間接に保有する関係や完全支配関係がある法人相互の関係と規定されています(法法2条十二の七の六)。発行済株式等から除かれるものには、自己株式に加えて、合計した株式数が発行済株式等の5%未満の「従業員持株会の所有株式」と「ストックオプションの行使により取得された役員や従業員の株式」が該当します(法令4条A)。
 ご質問の代表取締役社長等の所有株式が、どのような手段で取得した株式であるのかわかりませんが、ストックオプションの行使による取得であれば、5%未満の所有割合であることから、完全支配関係があるといえます。しかし、ストックオプションの行使による取得株式でなければ、たとえ1%未満の株式でも法令上は「全部」と規定していることから、完全支配関係があるとは言えないとのことです。



<完全支配関係の判定A>
Q2:当社では、普通株式に加えて議決権のない配当優先株式、議決権制限株式の種類株式を発行しております。普通株式はすべて親会社が所有しているものの、種類株式は、当社とは直接関係のない外部が所有しています。このため、親会社が当社の実権をすべて握っています。
 ところで、完全支配関係の判定では、無議決権株式も含めて判定するのでしょうか。

A2:議決権の有無に関係なく、株式の数で完全支配関係の判定を行います。完全支配関係に係る判定では、同族会社の判定で規定の議決権の判定(法令4条B)や同意議決権のみなし規定(法令4条E)はありません。このため、発行済株式の全部の所有かどうかで判断するとのことです。
 したがって、ご質問のケースの親会社は、完全支配関係がある法人には該当しません。



<譲渡損益調整資産の課税繰延べと土地@>
Q3:当社を含む100%企業グループでは、グループ内で土地取引を行う予定です。なぜ、譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度では、土地に限っては棚卸資産も対象となるのでしょうか。

A3:譲渡損益調整資産の対象は固定資産、固定資産に該当するもの以外の土地、有価証券、金銭債券及び繰延資産です。固定資産は税法上、棚卸資産を除いていますが(法令12条)、譲渡損益調整資産では固定資産以外の土地も対象となることから、土地は棚卸資産であっても対象となります(法法61条の13@)。また、簿価1,000万円未満の資産は対象外となっています(法令122条の14@)。
 土地の取引価格は通常、機械装置や備品等の固定資産の取引価格よりも高額で、1,000万円をはるかに上回るか価格が数多く存在します。高額取引でも棚卸資産に該当するからといって対象から外すのは、この制度の仕組みや所得金額の計算に大きく影響します。このことから、土地だけは棚卸資産も対象となるようです。



<譲渡損益調整資産の課税繰延べと土地A>
Q4:当社では100%グループ内の企業に対して土地の譲渡を行いました。この譲渡は譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度の対象資産に該当します。
 譲受法人が今後、この土地を分筆譲渡した場合、繰延べた譲渡損益額について全額戻入を行うことになるのでしょうか。

A4:繰延べた譲渡損益額は100%グループ内外問わず、再び対象資産の譲渡取引が行われると譲渡曽根き相当額を戻し入れます(法法61条の13、法令122条の14C)。土地譲渡も全部譲渡であれば、繰延べた譲渡損益額全額を戻し入れますが、土地の場合、全部譲渡ではなく一部譲渡も行われます。
 一部譲渡を行った場合の戻し入れについて、法令では規定されていませんが、取り扱いにて、面積基準など合理的な方法で計算した額で戻し入れるとしています(法基通12の4−3−5)。
 例えば、譲渡利益額5,000万円が繰延べられた譲渡損益調整資産である土地400平方メートルを、譲受法人が100平方メートルを切り売りした場合、戻し入れ額(益金算入額)は1,250万円(=5,000万円×100/400)となります。



<譲渡損益調整資産の課税繰延べと土地B>
Q5:100%企業グループ内で所有する土地に関して、グループ内企業を借地権者とする借地権を設定した場合、この借地権設定は譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度の適用があるのでしょうか。

A:対象資産が土地の場合、土地自体に加えて土地の上に存する借地権も含まれます(法法61条の13@)。
 ところで、借地権は税務上、借地権設定で土地の価額が50%以上値下がりした場合に、譲渡があったものとして、一定の金額が損金算入されます(法令138条)。
 100%企業グループ内企業が借地権者とする借地権を設定した場合、50%以上の値下がりとなれば、譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度の「譲渡」に該当し、50%以上の値下がりでなければ譲渡に該当しないと取扱われます(法基通12の4−2−1)。したがって、借地権の設定による土地の値下がり具合で判断してください。





       (以上参考;週刊「税務通信」第3142号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






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