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                                               2007年01月12日

特殊支配同族会社の基準所得金額1,600万円に引き上げ


定期同額、事前届出の役員給与についても整備   

   与党は、平成19年度の税制改正の内容を決定し、「平成19年度税制改正大綱」を取りまとめて公表した。  事業承継にかかる種類株式については、@配当優先の無議決権株式、A社債類似株式、B拒否権付株式の3類型の 相続税等における評価方法が定められる。
 会社法の施行により、19年5月から可能となる三角合併の課税の繰延要件については、現行の組織再編税制との 整合性を図り手当てされ、合併法人の100%親法人株式を合併対価として交付する場合は税制適格合併として課 税の繰延が認められる。また、非居住者や外国法人に外国親法人の株式が交付される場合には非適格とすることや、 タックス・ヘイブン会社を利用した合併による租税回避行為を防止する規定も設けられる。
 80年ぶりに改正された信託法関連では、法人税の回避を防止する観点から、その受託者に対し、受託者の信託財産 から生ずる所得について一定の要件のもと法人税を課税することとなる。また、改正信託法により可能となる多種多様 な信託についても、税制面での手当てが行われる。


三角合併関連

 会社法が施行され合併対価の柔軟化により、親会社の株式を用いた三角合併が可能となったが、会社法施行後1年間は凍結とされていた。19年改正では、この三角合併等に関する課税の繰延べの適格要件についての手当てが現行の組織再編税制を基本としたところで行われる。

 ・合併法人の100%親法人株式なら税制適格に

 合併対価として、合併法人の100%親法人の株式のみを交付する場合は課税の繰延げが可能とされ、その他の税制適格要件は現行の組織再編税制と同様に、合併法人と被合併法人の関係で判定することとなる。

 ・非居住者・外国法人は非適格に

 合併等の際に、非居住者・外国法人株主が外国親会社株式の交付を受ける場合には、旧株の譲渡益に対して課税することとされた。

 ・タックス・ヘイブン会社株式を用いた合併は非適格
 軽課税国に所在する実体のない外国親会社の株式を対価とする三角合併等が行われた場合、事業活動の実体がない場合には税制非適格合併とし、移転資産、株主の旧株主の譲渡益ともに課税するととされた。
 
 また、タックス・ヘイブン対策税制が適用される特定外国子会社等の株式を、軽課税国に所在する実体のない外国親会社等に現物出資する場合も、税制適格出資に該当しないこととされた。

 ・タックス・ヘイブン親会社等に留保された所得合算課税
 少数株主グループにより支配される内国法人の株主が、組織再編成等により軽課税国に所在する実体のない外国法人を通じてその内国法を支配することとなった場合、その外国法人又はその外国法人に係る外国子会社に留保した所得は、その外国法人の株主及び内国法人の所得に合算して課税する。

特定同族会社の留保金課税の見直し

 資本金又は出資金の額が1億円以下の中小特定同族会社については、留保金課税の適用対象から除外する。

特殊支配同族会社関連

特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度を見直し、平成19年4月1日以後に開始する事業年度から、現行800万円の適用除外基準である基準所得金額を1,600万円に引き上げる。

改正信託法関連

第165回臨時国会において成立した改正信託法に対応した税制上の措置が講じられる。

 ・法人税の回避に対応
 法人が委託者となる信託のうち、@重要事業の信託(事業の重要な一部又は全部について信託を設定し、その受益権の過半をその法人株主に交付することが見込まれるもの)A長期の自己信託等(自己信託等で、その信託期間が20年を超えるもの)B損益分配の操作が可能である自己信託等(受益権を子会社等が保有する自己信託等で、損益の分配割合が変更可能であるもの)に該当する場合には、法人税の回避を防止する観点から、その受託者に対し、受託者の信託財産から生ずる所得について一定の要件のもと法人税を課税する。

 ・遺言により設定された目的信託等の課税
 遺言により受益者の定めがない目的信託が設定された場合、受託者の地位を相続人が承継しないため相続人に対して課税ができないため、受託者の信託財産に対して受贈益及び信託期間中の所得に法人税を課税する。また、信託終了時の帰属権利者への残余財産の移転にかかる受贈益に対しても所得税又は法人税を課税することとされた。

 ・受益者連続型信託等の課税
 受益権がAからB、BからCへと一定の場合(受益者の死亡等)に順次、移転する定めのある受益者連続信託について、Aが死亡したことにより、Bへ移転した受益権が、Bの死亡によりCへ移転した場合、改正信託法ではAからCに受益権が移転したものと構成される。よって既にAが死亡しているため現行の相続税法では課税ができないので、Bから遺贈によりCが受益権を取得したとみなして相続税等を課税する。

 ・受益証券発行信託の課税
 不特定多数の者が「受益証券」を有することが可能となる一定の信託に対しては、投資信託と同様に分配時に受益者に対し、課税する。

 ・信託損失の適正化
 信託の受益者等に対し、実際に負担する以上に税務上の損失が計上される場合などに対応するため、組合事業に係る損失がある場合には、組合契約を利用した租税回避行為に対応した損失制限措置と同様の制度を導入する。


外国子会社合算税制の判定要件の見直し、及び適用除外の書類保存

タックス・ヘイブン対策税制が適用される内国法人等、及び外国関係子会社の判定について、種類株式により、議決権又は請求権の異なる株式を発行しているときは、株式の数の割合、議決権(剰余金の配当等に関するもの)の数の割合又は請求権に基づき分配される剰余金の配当等の金額の割合のいずれか多い割合で行うこととする。
 また、タックス・ヘイブン対策税制の適用除外を受けるための書類等の保存が必要であることを明確化する。


種類株式の相続税等における評価方法の明確化

中小企業の事業承継における種類株式の活用を図るため、@配当優先の無議決権株式、A社債類似株式、B拒否権付株式の3種類型についてその評価方法の明確化を図る。

非上場株式にかかる相続時清算課税制度の特例

平成19年1月1日から平成20年12月31日までの間に贈与を受けた取引相場のない株式等について、相続時清算課税制度にかかる贈与者年齢要件を一般の場合の65歳から60歳に引下げ、非課税枠についても2,500万円から3,000万円に拡大する。

上場株式等の譲渡益・配当の優遇税率(10%)

上場株式等の配当及び譲渡益に係る10%の軽減税率は、その適用期限を1年延長して、廃止し、証券市場の状況等を検討の上、平成21年度からは新たな制度の導入を目指すこととされた。

エンジェル税制の適用対象企業の要件の緩和

 ベンチャー企業育成のために、個人投資家が企業に投資をしやすくする現行のエンジェル税制につちえ、適用対象企業要件を緩和し、譲渡益に対する1/2課税の特例を平成21年3月31にまで2年間延長する。

企業の
設立年数
改正内容
1年未満 開発者が2人以上で全従業員等の10%以上であること、という要件を満たす企業も対象に追加する。
1年以上
2年未満
2年以上
5年未満
売上高成長率が25%以上であること、という要件を満たす企業も対象に追加する。



(以上参考;週刊「税務通信」第2947号)
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