M&Aネット 運営人:株式会社エムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会
2007年01月16日
|
3類型の種類株式 来年3月までに評価方法を
明確化し公表
中小企業の事業承継へ対応 相続時精算課税に自社株贈与の特例を新設
平成19年度税制改正大綱で、取引相場のない種類株式についての評価方法を明確化することが決定された。中小企業の事業承継で活用が期待される「配当優先の無議決権株式」、「社債類似株式」、「拒否権付株式」の3類型について、来年3月までに評価の基本的な考え方が、何らかのかたちで国税庁から示されることになる。
また、相続時精算課税制度については、自社株を後継者に贈与する場合の特例が設けられる、親の年齢要件を65歳以上から60歳に引下げ、非課税枠を500万円上乗せして3,000万円とする特例措置が、平成19年・20年中に相続時清算課税を利用する自社株贈与で適用できることになる。
なお、大綱では「検討事項」として、非上場株式等に係る税制措置については既存の特例措置も含め、課税の公平性に留意して、相続・贈与税制全体の在り方とともに幅広く検討するとしている
種類株式3類型について評価方法明確化へ
会社法の施行で活用の幅が広がったといわれる種類株式は、中小企業の事業承継対策においても注目されていたところ。6月にとりまとめられた事業承継協議会の中間報告書でも、種類株式の評価方法が明確化されれば中小企業でも活用が進むと提言されていた。
中小企業の事業承継で活用が期待される典型的な種類株式といわれる@配当優先の無議決権株式、A社債類似株式、B拒否権付株式の3類型について、評価方法を明確化することが税制改正大綱に盛り込まれることとなった。
中小企業庁の税制改正関係資料によると、@配当優先の無議決権株式については、普通株式と同様に評価することが原則である点は変わらないが、議決権がない点を考慮し、納税者の選択で普通株式の評価額から5%評価減できるようにする。ただし、評価減した部分は議決権株式の評価額の方に加算される。相続人全体の評価額は変わらないということだが、事業承継には利用しやすくなるといわれる。
Aの一定期間後に償還される社債類似株式については社債に準じた評価で、つまり、発行価額(払込価額)と配当に基づいて評価される。優先配当の無議決権株式であること、一定の期間後に発行会社が発行価額で取得すること、残余財産の分配は発行価額が上限、普通株式への転換権はないこと、などが定款で定められているものが対象となる。Bの拒否権付株式は普通株式と変わらないとして普通株式として評価されるが、この種類株式も活用へのニーズが比較的高いことから明確化は望ましいところだ。
これらの評価方法が正式に公表されるにあたり、財産評価基本通達の一部改正で行われるのか、あるいは質疑応答事例なのかなど、現段階ではその手続き的な部分は未定だが、評価方法の明確化で納税者の予測可能性が高まることになる。
事業後継者への自社株贈与に精算課税の特例
また、中小企業対策として、平成15年から導入されている相続時精算課税制度について、中小企業の早期・計画的な事業承継の促進を図るという観点から、自社株を贈与した場合の特例が措置法改正で追加される。
相続時精算課税制度は、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与について、2,500万円までの部分の贈与が非課税とされ、2,500万円を超える部分に一律20%の贈与税を課すというもの。住宅取得等のための贈与の場合には、親の年齢制限をはずし、非課税枠を1,000万円上乗せして3,500万円とする特例が創設時に設けられているが(適用期限は19年12月31日まで)、19年度改正で、新たに自社株を贈与する場合の特例が設けられることになるわけだ。
新設される特例は、オーナー経営者が後継者となる子に自社株を贈与する場合に、年齢要件を60歳以上に引下げ、非課税枠を500万円上乗せして3,000万円とするもの。発行済株式の相続税評価額が20億円未満であることのほか、特例を適用してから4年経過した時点で、贈与された後継者が代表者として経営にあたっていること、株式数と議決権の50%超を有していることが条件とされる。
年齢要件を60歳とし、4年経過時点に後継者が経営を掌握していることとしているのは、中小企業経営者が後継者に事業を引き継ぎたいと考える平均年齢や、オーナー経営者が引退を意思決定してから、後継者への引き継がれるまでに要する平均的な年数などを考慮して考えられているようだ。また、相続税申告での同族会社株式が平均5,000万円ほどであることから、オーナーの平均的な持株割合とを勘案して、株式の過半数を後継者に贈与するには3,000万円程度を非課税枠として設けることが適当とされたものとみられる。
(以上参考;週刊「税務通信」第2949号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)
|
|
Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.