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                                               2007年01月18日

改正「信託法」が成立 新型の信託制度が導入可能に


  
事業信託の利用で資金調達や事業再編が多様化   

  改正「信託法」が平成18年12月8日に成立、同15日に公布された(施行は公布の日から1年6ヶ月以内)。今回の改正により、新たなタイプの信託制度が導入の運びとなる。具体的には、委託者自ら受託者となる信託、すなわち自らの財産を自分に信託する「自己信託(信託宣言)」(施行は1年先送り)や事業部門を丸ごと信託できる「事業信託」、一定の条件の下で信託財産のみを責任財産の範囲とする「限定責任信託」、信託受益権を有価証券とすることができる「受益証券発行信託」などが可能となる。企業にとっては資金調達や事業再編の幅が広がることとなった。なお、信託法の改正に伴う会計上の問題を、企業会計基準委員会(ASBJ)の「特別目的会社・信託専門委員会」が取り上げ、審議を進めている。

自己信託と事業信託

  今回の改正では、信託財産の中に消極財産(負債)が含められることになった。このため、債権と債務を一体として信託することが可能となり、事業部門を丸ごと信託できるようになる(いわゆる「事業信託」)。また、「限定責任信託」の導入により、一定の情報開示や会計帳簿の整備などを条件に、信託財産のみを責任財産とすることが可能となった(仮に信託財産が破産しても受託者自身の財産に強制執行等が及ぶことはない)。負債のリスクが軽減されるため、事業信託が利用しやすくなる。事業信託を使えば、不採算部門を切り離して同業他社に信託することなども可能で、新たな事業再編も可能となる。
 また、、「事業信託」と「自己信託」を組合せて使うことも可能だ。信託のメリットは『倒産隔離性』、つまり、委託者が倒産しても信託財産には強制執行等が及ばないことにある。
 そこで、例えば新薬開発などリスクの高い事業部門を自己信託することが考えられる。こうすることで、企業は実質的に財産を所有しながら、事業のリスクを分離することができる。さらに、信託財産を裏づけとした信託受益権を投資家に売ることによる資金調達も可能だ。
 ただし、「自己信託」については、課税逃れや財産隠しなどに悪用されることも懸念されるため、施行から1年間適用が先送りされる。



 
会計上の問題

今年夏に施行が見込まれる金融商品取引法では、受益証券発行信託の受益証券や信託の受益権が同法上の「有価証券」とされ、開示対象となるものが含まれてくるが、信託に関する会計処理は明確になっていない。このため、企業会計基準委員会(ASBJ)の「特別目的会社・信託専門委員会」で現在審議が進められている。


(以上参考;週刊「経営財務」第2801号)
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