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後援:税務研究会
2007年01月23日
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経団連 合併等対価の柔軟化に対する規律強化を要請
対価が現金・日本上場有価証券以外では特殊決議を
来年5月に施行される合併等対価の柔軟化に向け、(社)日本経済団体連合会は12月12日、「M&A法制の一層の整備を求める」意見書を公表した。「三角合併」が解禁され、外国企業は現金を用いることなく日本企業を100%子会社化できることから、懸念される問題への対処として規律の強化(法令整備)を要請したもの、対価が現金または日本上場有価証券以外であれば、決議要件を特殊決議とするとともに、ディスクロージャーを徹底することなどを提案している。その他、事業結合規制立法の整備や、TOB制度および上場規制の見直しなどM&A法制の早急な整備が必要であると指摘している。
対価が外国企業株の場合、株主に損害も
平成19年今年5月には1年延期されていた会社法の合併等対価の柔軟化が施行される、これにより、対価として、当事会社の株式のほか、金銭や親会社の株式等を用いることが可能となる。
その一形態として、内外から注目を集めているのが「三角合併」である、三角合併とは、消滅会社の株主に、合併等の対価として、存続会社の親会社の株式を用いる仕組み。例えば、親会社Zが上場会社で、子会社Yが非上場会社であるような場合には、子会社Yの株式ではなく、親会社Zの上場株式を合併相手方Xの株主に交付した方が、それらの株主の利益になる場合がある(下図参照)。
ただ、「消滅会社の株主に交付される親会社の株式には、何ら制限がないため、合併に反対する株主に与えられる買取請求権のみでは、株主が損害をこうむる恐れがある」(意見書)。これは、親会社が外国企業であることを想定したもの。外国企業も5月から、子会社を買取対象企業と合併させるに当たり、現金ではなく、自社の株式を対価にできるからだ。外国企業の株式を交付された日本の株主には、「言語、準拠する会計制度、情報開示の範囲などが我が国のそれと異なるため、〜理解が困難な状況が発生することが懸念される。」(同)。さらに、三角合併解禁を契機として敵対的買収が誘因され、これまで以上にM&Aが活発化し、不測の事態が生じることが予想されるという。
合併の決議要件は特殊決議とし、厳格化を
こうした懸念される問題への対処として経団連は、株主保護等の観点から、「会社法施行規則のみならず、幅広くM&A法制全般を見直し、総合的な法整備を早急に行うべきである」とし、以下の対策を講じることを要請している。
1.合併対価に対する規律の強化
消滅会社が上場会社である場合、現金又は日本上場有価証券(あるいは日本の上場基準を満たす有価証券)以外を対価とする合併の決議要件は、例えば特殊決議(議決権の3分の2プラス総株主の半数)とするなど、厳格化すべき。
また、現金又は日本上場有価証券(あるいは日本の上場基準を満たす有価証券)以外を対価とする合併については、ディスクロージャーを徹底するとともに、消滅会社の役員に対価に関する厳しい説明責任を負わせるべき。
2.事業結合規制立法の整備
米国デラウェア州法では、。敵対的買収者が15%以上の株式を取得した場合、以後3年間は、敵対的買収者以外の総議決権の3分の2の賛成等がなければ合併はできない。我が国でも、濫用的なM&Aを規制するため、このような制度的措置を設けるべき。
3.TOB制度の見直し
TOBの対価が現金又は日本上場有価証券以外の場合、欧州のように、株主に現金との選択権を与えることを義務付けるべき。
4.上場規則における多様な種類株式や多彩な買収防衛策の利用の許容、上場企業を非上場会社が吸収合併する等の場合の厳格な行動規制の制定等を行うべき。
5.外国為替及び外国貿易法(外為法)等の強化
外為法では、国の安全等に影響するおそれがある一定の投資に限り、事前の届出が必要とされているが、当該投資の態様によっては、技術の流出等により国内の経済基盤に申告な影響を与え、あるいは国家安全保障を損なう自体を生じることが懸念される。特に最近では、欧米のみならず、経済成長の著しい国においても国家の資金力等を背景に巨大企業が出現しており、国際的なM&Aに乗り出している。こうした観点から、米国のエクソン・フロリオ条項に準じ、安全保障の観点から規制対象とすべき生産・技術基盤の範囲等を早急に見直し、法改正の必要があれば、次期通常国会で行うべき。
6.税制適格要件の維持
三角合併についても組織再編成税制の適格要件を厳格に適用し、とりわけ事業関連性要件は、合併法人と被合併法人との間でのみ判断する制度を維持し、事業を行っていない子会社(ペーパーカンパニー)を通じた三角合併については課税繰り延べを認めるべきではない。
(以上参考;週刊「経営財務」第2800号)
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