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                                               2007年02月02日

日仏租税条約を部分改正 使用料は源泉地国で免税に


社会保障協定による所得控除が認められはじめての条約に   

  10年ぶりの改正となる交渉が進められていた日仏租税条約について、議定書の改正が合意に至り、今後の両国の国内法の手続き次第となるが、2008年に1月1日から改正条約が適用されることとなりそうだ。
 今回の改正は、議定書の改正による条約の部分改正で、配当、利子及び使用料(著作権、特許権等)の支払に対する源泉地国課税が軽減され、特に使用料及び金融機関等が受け取る利子等については源泉地国免税となる。また、これらの減免措置のほかに、租税回避の防止のために特典条項を設け、条約による恩典を一定に要件を満たす適格者等に限定することとされている。
 さらに、社会保障協定に関連して、社会保障制度に対して支払われる社会保険料の就労地国における所得控除が認められる初めての条約となり注目される。


使用料は免税に

  財務省は、1月12日にホームページで、日仏租税条約の改正規定書が署名に至ったことを公表した。
 今回の改正は全面改正ではなく、議定書の改正による部分改正となっている。
 配当、利子及び使用料(著作権、特許権等)については、下記のように減免措置が講じられる。


条約特典濫用防止規定を導入

 改正条約では、条約特典の濫用を防止するため、条約上の特典を享受できる者を一定の要件を満たす適格者等に限定している 。 また、日仏以外の第三国に居住する者が、条約の特典を受けるために日仏いずれか一方の国にペーパーカンパニーを設立し、一定の取引を行うことやそのパーパーカンパニーを介した取引が条約の特典を受けるためだけである場合には、その取引にかかる条約特典が否認される条項も設けられている。これらは「条約漁り」と呼ばれる条約の恩典を享受することによる租税回避行為に対しての防止措置と想定される。

社会保険料条項を制定

 また、改正日仏条約は、社会保険料条項が設けられたはじめての租税条約としても注目されている。外国に派遣されている日本人、外国から日本に派遣されている外国人の社会保険料については、派遣地国と自国の両国で支払う必要があり、二重負担が問題となっていたが、日仏間においては、今回改正となった租税条約と社会保障協定が発効されることで、この問題が解決されることとなる。これはフランスに派遣された日本人が日本で払っている社会保険料を、フランスにおける申告で所得から控除することが認められることとなるため。これは相互協定であるため、日本に派遣されているフランス人についても同様の措置が認められる。
 なお、日仏社会保障協定は、両国の署名は既に行われているものの、現段階では発効されておらず、平成19年度中に発効される見込み。

匿名組合に対する課税権を確保

 匿名組合から分配される所得については、これまで所得が生ずる国が日本であっても、日仏条約に取り決めがないことからその他所得となり実質的に免税となっていた。この点について、新条約では、匿名組合を通じた所得を所得の生じた国の法令に従い課税できることが明確になっている。

2008年1月から適用も

 今後、改正議定書は、日仏両国の国内法の手続に従って承認された後に効力が生じることとなるが、財務省のホームページでは改正議定書が本年中に発効した場合として、下記の通り案内されていることから、適用は2008年1月からになると考えられる。
@ 源泉徴収される租税に関しては、2008年1月1日以降に租税を課される額
A 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、2008年1月1日以後に開始する各課税年度の所得
B その他の租税に関しては、2008年1月1日以後に開始する各課税年度の租税

改正後
配当 一般  10%
親子間 直間10%以上の株式保有  5%
日本源泉:直接15%以上又は直間25%以上
仏源泉:直間15%以上
 免税
 利子  免税(金融機関、年金基金等)
 10%(一般)
 使用料  免税



(以上参考;週刊「税務通信」第2953号)
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