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                                               2007年02月07日

申告期限後に株譲渡繰越が適用できるケースを再確認


  
「連続して行う確定申告」を失念した場合も救済可   

   「上場株式等の譲渡損失の3年繰越制度」では、「期限後申告」や「更生の請求」によって制度の適用を受けることができる場合があるが、期限後申告で対応可能なケースとしては、譲渡損失が生じた年分の確定申告自体を失念した場合のほか、その後の年分の所得税について連続して提出する必要ののある確定申告書の提出を行わなかった場合も含まれる。
 そのほか、確定申告書の提出はしたものの、譲渡損失に係る明細書等の添付を失念した場合には、「更生の請求」で適用可能な場合もある。関与税理士がが繰越控除を失念して、損額賠償事件に至った例もあるので、平成18年分の確定申告期を前に「特定口座」の取扱い」も含めて改めて確認しておきたい。


「一般口座」での上場株式等譲渡損失について
確定申告を行わなかった場合


  周知のとおり、平成15年1月1日以後の上場株式等の譲渡から実施されている「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除制度」は、@譲渡損失の生じた年分の所得税について「譲渡損失の金額の計算に関する明細書」等一定の書類の添付がある確定申告書を提出すること、Aその後において連続して確定申告書を提出していること、B繰越控除を受けようとする年分の確定申告書に「繰越控除を受ける金額の計算に関する明細書等」の一定の書類の添付があること、のすべての要件を満たすことが求められている(措法37の12の2)。
 ここでいう「確定申告」には、「期限後申告」が含まれると解されていることから、@の当初の確定申告を失念したケースのほか、Aの連続して行う確定申告を失念したケースであっても、期限後申告を行うことで制度の適用を受けることができる。
 例えば、極端な場合、

  • 平成15年中の上場株式等への投資が赤字となったが、譲渡損失について確定申告を行わなかった。
  • 平成16年、17年は株式投資を行わなかったため、確定申告を行わなかった。
  • 平成18年中に、上場株式等の売買を行い譲渡益が出た。

というような場合であっても、18年分の確定申告において、平成15年〜17年分について、所定の明細書等を添付して「期限後申告」を行えば、18年分で平成15年分の譲渡損と平成18年分の譲渡益を通算することができる(18年分の譲渡益が限度)。
 ただし、他に事業所得や不動産所得等の所得があり、期限内に確定申告を行うことはできないので、こうしたケースで繰越控除の適用ができるのは、通常は確定申告の必要のない給与所得者(医療費控除等で確定申告を行っている場合は不可)や他に所得のない主婦等が中心となろう。
 また、上記のケースで、平成15年分については、所定の明細書を添付した確定申告(損失申告)を行い、平成16、17年分の確定申告を失念したという場合であっても、平成16,17年分について期限後申告を行うことで、制度の適用を受けることができる。
 なお、他に所得があって確定申告を行ったものの、明細書の添付等譲渡損失に係る手続を失念した場合には、「更生の請求」を行うことで、繰越控除が受けられるケースもあるので、併せて念頭においておきたい(措通37の12の2−1)


特定口座の源泉徴収選択口座でも期限後申告は可能だが更生の請求」はできない

 また、「特定口座の源泉徴収選択口座」で生じた譲渡損益については、確定申告の必要はないのであるが、譲渡損失について繰越控除を受けるためには、確定申告を行わなければならない。
 この点、確定申告を行って源泉徴収選択口座で生じた譲渡損失を繰り越す場合も、前述の「一般口座」の場合と同様、他の所得に係る確定申告や特定口座以外の株式譲渡所得に係る確定申告等を行っていない限りは、期限後申告を行うことで、繰越控除が可能となっている。
 ただし、確定申告自体は行ったものの、明細等の添付等の譲渡損繰越の手続を失念した場合については、一般口座の場合と異なり、源泉徴収選択口座の譲渡損失については、「申告不要制度を選択した」ことになって「更生の請求」を行うことはできない。
 源泉徴収選択口座の譲渡損失の繰越しに関しては、事業所得や不動産所得等の他の所得がある者が、確定申告時に繰越しの手続を失念したり、普段は確定申告が必要ない給与所得者が、株式譲渡所得の確定申告を行った際、源泉徴収選択口座に譲渡損失が生じているにも関わらず、これを含めずに確定申告を行った例が散見されるようだ。  こうした場合には、期限後申告はもちろん、更生の請求も行うことはできなくなってしまうので、譲渡損失が生じた年の確定申告時に十分注意したいところだ。


(以上参考;週刊「税務通信」第2954号)
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