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                                               2007年02月22日

平成19年度税制改正法案 国会へ提出


  
「信託税制」「組織再編税制」では租税回避防止措置も   

 2月2日、第168回通常国会に、「所得税法等の一部を改正する法律案」が提出された。
 同法案は、平成19年度の税制改正のうち、国税に係る改正事項が盛り込まれたものであるが、来年度の税制改正では、「減価償却制度」の抜本的見直し、留保金課税制度の見直しを中心とした「中小企業関係税制」、バリアフリー改修促進税制を中心とした「住宅・土地税制」、会社法の合併対価の柔軟化に対応した「組織再編税制」、信託法の改正に対応した「信託税制」、ITを活用した納税環境整備等で所要の措置が講ぜられ、法律の改正事項も多岐に亘っているのが特徴だ。
 法案には、今後、19年度予算案に併せ審議に掛けられるが、財務金融委員会に付託後、本会議での議論を経て、3月下旬に成立するものとみられている。
 主なM&Aに関する改正内容は以下のとおりで、施行日は特段の定めがあるものを除き、平成19年4月1日からとされている(改正法案要綱33頁)。

法人税関係

 
信託の新たな類型に係る取り扱いを租税回避防止策とともに規定

  信託法の改正によって実施可能となった新たな信託の類型への対応については、各税法へ与える影響が大きく、今回の改正法案では、信託を使った租税回避行為の防止措置と併せてさまざまな規定が盛り込まれている。
 このうち、法人税法では、新たに「特定受益証券発行信託」を定義し、従来の合同運用信託及び投資信託と合わせて「集団投資信託」と規定したほか、「受益者が存しない信託」等を従来の特定目的信託等と合わせて「法人課税信託」と定義付けている(法法2)。
 また、「法人課税信託」については、内国法人である公益法人等や個人等が引受けを行う場合に法人税の納税義務を課す規定や、従来の「特定信託」の規定を削除し、新たに法人課税信託の受託者や委託者に関する規定を定めているほか(法法4、4の6、4の7)、法人課税信託の創設に伴う所得計算の根拠規定(法法64の3)や軽減税率の不適用規定等も整備されている(法法66他)。
 なお、これら信託税制に係る改正事項は、原則として、改正信託法の施行日以に効力が生じる信託について適用することとされている(附則34)。

組織再編税制では合併対価の柔軟化対応が

   ・規定の適用時期は改正法案附則で確認

 組織再編税制の見直しでは、周知のとおり、本年5月1日より施行される会社法の、いわゆる合併対価の柔軟化に対応して、合併等に際して、その対価として、存続会社の株式等以外の財産を交付する場合のうち、一定の要件を満たすものを的確合併等の範囲に含め、株式譲渡損益の繰延べを可能とする手当てがなされる。
 法案では、合併、分割又は株式交換に係る適格であると認められる合併等の対価に、合併親法人の株式以外の資産が交付されない場合の合併親法人等の株式が加えられ(法法2)、被合併法人等の株主について、被合併法人等の株式の譲渡損益計上の繰延べ芽が認められている合併等の対価に、合併法人の発行済株式の全部を保有する法人の株式以外の資産が交付されなかった場合のその法人の株式が加えられている(法法61の2)。
 また、合併対価の柔軟化等に対応した組織再編税制の見直しでは、国際的な租税回避を防止するため、特定低軽課税外国法人に該当する親法人の株式が対価である場合等の規制策が、租税特別措置法に規定されている(措法68条の2の3、第68条の3他)。
 なお、組織再編税制の改正については、施行日が本年5月1日のものと、10月1日のものとがあるので附則で確認しておきたい。

所得税関係


上場株式に係る配当・譲渡益課税の軽減税率1年延長を明記

 金融・証券税制では、既報のとおり、「上場株式等の配当等に係る税率の特例及び上場株式等に係る譲渡所得等の税率の特例」(措法37の11他)の適用期限が1年延長されたほか、「組織再編税制」の見直しの一環で、合併等に際し、個人株主に対して「合併法人または合併法人の発行済株式の全部を保有する法人のいずれか一方の株式以外の資産の交付がされた場合」、交付金銭等の合計額のうち、みなし配当を除いて、株式等にかかる譲渡所得等に係る収入金額とみなして分離課税の規定を適用する旨の改正が盛り込まれている(措法37の10)。
 そのほか、「再チャレンジ支援寄付金税制」として、地域再生法の認定地域再生計画に定められた区域内に住所を有する等一定の個人が、認定地方公共団体が指定する特定地域j雇用等促進法人に対して寄付金を支出した場合の寄附金控除(措法41の18の2)が盛り込まれているほか、法人税と同様、各種特別償却制度等に関して、廃止、延長等の所要の措置が図られている。

相続税関係その他

相続時精算課税制度に自社株贈与特例を創設

 平成15年度税制改正で創設された『相続時精算課税制度』については、現行の住宅取得等資金贈与の特例(非課税枠:3500万円)に加えて、中小企業オーナー経営者から事業の後継者となる子に対する自社株の贈与の場合に、贈与者の年齢を65歳から60歳以上へと引き下げ、非課税枠を2500万円から3000万円とする特例が設けられる。
 相続税の特例として租税特別措置法に、第70条の3の3 《特定の贈与者から特定の同族株式等の贈与を受けた場合の相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の特例》が新設されることで、相続時精算課税制度の前倒し適用の入り口が、住宅取得資金と自社株の2つになる。
 この自社株贈与の特例では、まず、相続時精算課税制度を利用して自社株の贈与を受ける年において、オーナー経営者(親)が、株式等の最初の贈与の直前に当該同族法人の代表者で、法人の株式又は出資の50%超、議決権の50%超を有する者であることが必要となる。そして、自社株の贈与によって、特例を選択した年の翌年3月15日から4年を経過する日(「確認日」)において、こんどは、子がこれらの要件を満たす特定受贈者でなければならない。同族法人と受贈者とが要件を満たすことを確認する手続きが必要となる。

相続税法でも改正信託法に対応して税制整備

 信託法による新たな信託類型については、相続税法においても租税回避防止などの観点から課税の中立・公平を確保するための措置が講じられる。
 相続税法4条の信託行為があった場合の規定を削除し、新たに「第4章U信託に関する特例」として、贈与または遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利(9条の2)で、信託の効力発生時、受益者の変更時、信託の終了時等の課税関係を示し、受益者連続型信託の特例(9条の3)、受益者等が存在しない信託等の特例(9条の4)などの規定を設けている。
 いわゆる後継ぎ遺贈型信託(「受益者連続型信託」)については、現行相続法上、委託者の死亡で相続人が受益権を取得、その受益者(前受益者)の死亡で委託者から受益権を取得する受益者は相続税の対象とならない。これについては、受益権は前受益者から遺贈により移転したものとみなし、相続税の対象とされることになる(9条の2、9条の3)。
 遺言により設定された目的信託など受益者の定めのない信託についても、その信託が効力を生じる場合、受益者となる者が委託者の親族等の場合には受託者が贈与で取得したものとみなすなどされる。受託者が個人以外で、法人税率と相続税率の差を使った租税回避についえてゃ、受託者を個人とみなして相続税等を課税するなどの措置も設けられる。
 なお、信託税制では、法人税法、所得税法、相続税法のほか、登録免許税法、消費税法、印紙税法、国税通則法、国税徴収法等についても、所要の整備が行われる。




(以上参考;週刊「税務通信」第2955号)
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