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                                               2007年3月12日

東京高裁 オランダ子会社を利用した租税回避事件の
差戻審で判決

  未上場株の評価で算定方法を再検討・納税額を減額   

  1月30日、東京高等裁判所・第24民事部において、昨年1月24日の最高裁で原審差戻しの判決を受けた旧特定現物出資特例によってオランダに設立した子会社を利用した租税回避事件の判決が言渡された(平成18年(行コ)第31号)。
 先の最高裁判決では、課税処分そのものは適法であるものの、オランダ子会社の財産のほとんどを占める複数の放送会社株式の評価方法について、十分検討がなされていないとされていた。
 同判決を受け、差戻審では、オランダ子会社の有する放送会社株の価額は、時価純資産価額方式によるべきとした上で、一部の放送会社株について、法人税等相当額の控除を認めたため、当初課税処分による追徴税額約107億円のうち、約10億円が減額された。


最高裁は株式の評価方法の再検討を指示して高裁へ差戻し

 周知のとおり、この事件は教育出版大手のO社が、旧法人税法51条の特定現物出資の特例を適用して子会社A社をオランダに設立し、そのA社が別の在オランダ関連会社B社に対して行った第三者割当増資は、親会社であるO社が所有する複数の放送会社株について、含み益の移転を図った租税回避行為であるとして、課税当局より約107億円の課税処分を受けたことから争いになったもの。
 一審の東京地裁で国側敗訴、二審の東京地裁では国側の逆転勝訴となった経緯があり、争点は複数あったが、上告審で、最高裁が再審理を命じたのは、次の2点。
@ A社の保有するD放送株式の評価について、純資産価額方式を採用した場合の法人税等相当額控除の是非の検討
A D放送及びI社(D放送が株式を保有する外国法人)保有のHテレビ株式、及びA社の保有するテレビC株式について、配当還元方式による評価の検討と、時価純資産価額方式で評価する場合の法人税等相当額の控除の是非の検討


放送会社株式の一部について純資産価額算定において法人税等相当額を控除することを認める

 これについて、東京高裁・第24民事部(大喜多啓光裁判長)は、@について、関係法人がD放送株式について、法人税等相当額を控除しない方式で評価する方が適切であると認識していたことを窺い知る証拠はないから、D放送株式の1株当たり純資産額の評価においては、法人税等相当額を控除すべきであるとした。
 また、Aについて、D放送及びI社のHテレビの株式保有割合は、28.4%ないしは31.8%であるが、D放送はHテレビ設立に関与し、D放送の代表取締役及び取締役がHテレビの取締役に就任、平成7年3月の第三者割当増資の際に割当を受けている、等々の事実から、D放送及びI社によるHテレビ株の保有は、単に配当期待とはいえず、Hテレビの事業経営に対して、持株割合に基づく影響力を有していたと推認される。したがって、Hテレビ株式の評価について、配当還元方式を採用するのは、課税上の弊害をもたらすといえるとしている。
 一方、Hテレビ株式は売買実例がなく、公開途上にもなく、類似法人もないと認められることから、時価純資産価額方式により評価するのが相当であり、その際、D放送株式の時価純資産価額の算定において、法人税等相当額を控除するのは適当でなく、法人税等相当額を控除しないで算定すべきであるとしている。
 なお、A社の保有するテレビC株式の評価についても、種々の事実から、その保有目的は配当期待とはいえず、また、A社は、平成7年3月に、A社の関連会社にテレビC株式を売買する際、法人税等相当額を控除しない時価純資産価額方式によって譲渡価額を算定しているのであるから、当時、Hテレビ株の評価について、法人税等相当額を控除しない時価純資産価額方式による方が適切であることを認識していたといえ、A社保有のテレビC株の評価については、法人税等相当額を控除しない時価純資産価額方式によるべきであると判じている。
 そして、上記、評価方法に基づいて、A社の資産を評価し直した上で、被控訴人(O社)のH6.10.1〜H7.9.30事業年度の法人税の更正処分のうち、納付すべき税額83億7,035万5,400円を超える部分及び過少申告加算税の賦課処分のうち、12億82万6,500円を超える部分を取り消す判決を言い渡した。


(以上参考;週刊「税務通信」第2955号)
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