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                                               2007年4月3日

信託財産を利用した匿名組合出資について
源泉徴収を免除


  源泉徴収の対象となる匿名組合の人数要件は撤廃   


  19年度税制改正では、匿名組合契約等に基づく利益の分配について、現行制度で源泉徴収制度の対象となる組合員が10人以上の場合という組合員の人数要件が撤廃される。これにより、すべての匿名組合契約等に基づく居住者又は内国法人に対する利益の分配について、組合員の人数にかかわらず支払調書及び源泉徴収制度の対象となるため、匿名組合を利用した投資ファンド等への課税が強化されるとして注目されている。
 その一方、信託会社又は信託銀行が、厚生年金基金契約等に係る信託財産による匿名組合契約等に基づく利益の分配については、源泉徴収が免除される措置が講じられるとされており、非課税とされている公益信託等についてこれまでの懸念が排除される改正となっており、こちらも注目される。


匿名組合の人数要件を撤廃


 19年度改正では、匿名組合契約等に基づき行われる営業者からの利益の分配について、「10人以上の匿名組合員と締結している匿名組合契約」とされている原稿の源泉徴収制度の人数要件が撤廃される。これにより、すべての匿名組合契約等による利益の分配が源泉徴収の対象となる。
 商法に規定される匿名組合契約は、出資者が営業者と契約を締結し、営業者の営む事業から利益の分配を受けるもの。匿名組合については、あたかも独立した団体が存在しているかのようにとられることもあるようだが、あくまでも組合員となる出資者と営業者との契約。
 先日も、事業が破綻し社会的に問題となった匿名組合にかかる報道があったが、出資者同士が共同で事業を経営している意識や、事業財産を共有している事実が存在していないとすると、その場合も匿名組合契約を用いた出資と解される。匿名組合契約においては、組合員同士において、匿名性が確保されていることから、匿名とよばれ、実質は一対一関係による契約となる。なお、この匿名組合契約による営業者からの利益の分配は、税務上「雑所得」と整理されている。



厚年契約等の源泉徴収を免除


 その一方、信託会社又は信託銀行が、退職年金や厚生年金基金契約等に係る信託の信託財産に属する匿名組合契約等に基づく権利については、源泉徴収を免除する措置が講じられる。
 これは、匿名組合契約における営業者が利益の分配の支払をする際に、備え付けている帳簿に、その信託会社又は信託銀行が締結している帳簿に、その信託会社又は信託銀行が締結している匿名組合契約等に基づく権利が、その信託財産に属する旨等の登載を受けている場合には、源泉徴収が免除されるというもの。
 もちろん、その権利についてその登載を受けている期間内に支払われるその匿名組合契約等に基づく利益の分配という制約がつくものの、これは厚生年金等の資産運用を行う公共法人等にとっては、大きな改正となる。
 現行の所得税の11条では、公共法人等及び公益信託等に係る非課税規定が定められており、信託の委託者が年金基金等である場合には所得税が課されることはないとされている。ただし、そのような場合でも仮に源泉徴収されると、年金基金等の団体は源泉徴収された金額を調整することができないため、これまでは、源泉徴収制度の適用の有無にかかる組合員の数の判定基準が重要とされてきた。
 これについては、信託銀行の行った「信託財産を利用して匿名組合出資を行う場合における匿名組合員の判定について」の事前紹介で、匿名組合員の数の判定は、匿名組合契約の数によって行うのが相当との見解が示された事例もある。
 ただ、公共法人等が信託銀行に信託しているような場合には、匿名組合の営業者が匿名組合契約を締結しているのが信託銀行となるために、匿名組合の営業者は、信託銀行が年金信託契約を締結している信託の委託者である年金基金等を確認できないため源泉徴収を行ってしまう可能性が指摘されていた。
 今回の改正によって、匿名組合契約等にかかる利益の分配について、源泉徴収の人数要件はなくなるものの退職年金や厚生年金基金契約等に係る信託財産を利用した匿名組合出資を行う場合であれば、源泉徴収が課されないこととなる。よってこれまで公共法人等が資産運用を行う際に懸念されてきた問題が解消されることとなる。
 なお、これらの改正は、平成20年1月1日以後に支払われる匿名組合契約等に基づく利益の分配について適用される。


(以上参考;週刊「税務通信」第2959号)
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