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                                               2007年4月10日

新設合併等に係る事業年度で取扱い見直しの見込み


  事業年度開始日に合併登記を行わない場合には被合併法人側で
「みなし事業年度」が   


 企業が新設合併を行う場合、旧商法下の実務では、被合併法人の資産・負債が新設合併法人に移転する日である「合併期日」と新設合併法人が成立する日(設立登記の日)とに乖離が生ずることもあったが、会社法においては、新設合併法人が成立する日に消滅する被合併法人の権利義務を承継することとされたたため、税務上、事業年度がどのように取り扱われるかという点について疑義が生じていた。
 この点について、弊誌が確認したところ、会社法の規定及び登記実務から、こうしたケースで、従来、新設合併法人の「設立期間中」の損益として取り扱われていた部分は、被合併法人の「みなし事業年度」の損益として取り扱うこととされ、通達改正にその旨が盛り込まれる見込みであることが明らかとなった。


現行の取り扱いでは合併期日と合併登記の日との間の 損益は新設合併法人の「設立期間中」の損益

 従来、旧商法では、新設合併は、新設会社が合併の登記を行うことによってその効力を生ずるとされていたが(旧商法102)、他方、合併契約書において実質的な効力発生日である「合併期日」を定める旨の規定があった。
 また、合併の実務としては、合併期日において被合併法人のすべての資産・負債は合併法人に実体的に承継され、被合併法人は合併期日においてその実態を失い消滅するとされていた。
 このため、税務上は、まず、合併等により被合併法人等の資産・負債が移転するのは、「合併契約において合併期日として定めた日」(現行其通1−4−1)として取り扱うこととしていた。
 次に事業年度については、消滅する被合併法人にあっては、その事業年度の開始の日から合併期日の前日までの期間の「みなし事業年度」が生じるとともに、新設合併法人にあっては、設立登記の日から事業年度が開始されることとされていた。
 そのため、例えば、3月決算会社同士が、4月1日を合併期日として新設合併を行い、合併期日と合併登記の日とにタイムラグがあった場合には、事業年度開始の日の合併であるため、税務上は、被合併法人について「みなし事業年度」は生じないこととなる一方(法法13)、新設合併法人の事業年度については、合併登記を行って、合併の効力が発生するまでは開始しないため、この間の損益を合併前の法人と合併後の法人とのどちらにつけるかが問題となっていた。
 この点、従来の取り扱いにおいては、合併期日から合併登記によって新設合併法人が成立するまでの間は、新設合併法人の「設立期間」として、その間の損益を新設合併法人の設立後最初事業年度の損益に取り込むこととされていた(現行其通2−6−2の2)(図の@)。



会社法では消滅会社の権利義務は新設会社の設立の日に移転・事業年度開始の日に登記できなければ税務上は「みなし事業年度」

 ところが、会社法では、「新設合併設立会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する」と規定され、被合併法人の資産・負債については、新設合併法人が成立する日、すなわち、設立登記の日までは、被合併法人側に留め置かれることが明確化された(会社法754@)。
 また、登記実務においても、新設合併法人の設立登記と被合併法人の解散登記が同時になされるとともに、消滅する被合併法人の新設合併による解散の日と新設合併法人の設立の日が同一日で登記されることとされている。
 そのため、会社法施行後の新設合併については、前述の会社法の規定及び登記実務を勘案すると、被合併法人の事業年度終了の日と新設合併法人が成立する設立登記の日との間に乖離がある場合、被合併法人に「みなし事業年度」が生じ(法法14)、その間の損益については、被合併法人側の損益となるため、会社法の制定に対応した通達の改正で、所要の整備が図られる見込みであることが、弊誌の取材により明らかとなった。
 したがって、新しい取り扱いを受ける新設合併において、事業年度開始の日に登記を行うことができない場合には、従来の事業年度開始の日を合併期日として行う新設合併では生じなかった「みなし事業年度」が生じることとなる(図のA)。
 この点、会社法では、新設合併契約において定めるべき事項には、合併期日は含まれていないのであるが(会社法753@)、みなし事業年度が生じることを避けて新設合併を行うためには、新設合併に係る登記、すなわち、消滅会社の解散登記と新設会社の設立登記とを事業年度開始の日に行うことができるようスケジューリングする必要があるだろう。
 ちなみに、3月決算法人同士が新設合併を行い平成19年度から新設合併法人として事業活動を行おうとする場合、平成19年4月1日は日曜日であるため、登記申請を行うことができず、最短でも翌4月2日の登記ということになる。
 この場合、従来の取り扱いでは、平成19年4月1日の損益は、新設合併法人の設立最初事業年度に取り込まれることになるが、新しい取り扱いによれば、被合併法人の事業年度末である平成19年3月31日と新設合併法人が成立する平成19年4月2日までの間に、たった1日ではあるが「みなし事業年度」が生じ、当然のことながら、みなし事業年度に係る申告義務も生じることになる。
 また、上記の取り扱いは、新設合併のほか、新設分割(会社分割によって新設法人を設立する場合)にも同様の取り扱いが置かれる見込みである。
 なお、吸収合併においては、従前の合併期日を効力発生日とすれば税務上の取り扱いも従前どおりとなる。
 そのほか、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(いわゆる整備法)の規定によって、なお従前の例によるとされる合併等については、税務上も、なお従前の例による旨の「経過的取扱い」が置かれる見込みとなっている。





(以上参考;週刊「税務通信」第2960号)
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