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                                               2007年4月12日

無議決権株式に選択で5%評価減の調整計算を導入


  国税庁 事業承継で活用見込まれる種類株式3類型の評価法法を明確化   

  国税庁は3月16日、文書回答事例「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」を公表した。中小企業庁からの事前照会に2月26日付けで回答されたもの。
 これにより、中小企業の事業承継対策で実際に導入が見込まれる、@配当優先の無議決権株式、A社債類似株式、B拒否権付株式の3類型の種類株式について評価の取り扱いが明確化されることとなった。
 配当優先の無議決権株式は、普通株式と同様に純資産価額方式等での評価が原則となるが、納税者の選択により、無議決権株式は普通株式の評価額から5%の評価減を行い、その減額分を議決権株式に加算して評価する方法が採用できる。事業承継対策としてあらかじめ配当優先の無議決権株式を発行し、事業後継者が普通株式、非後継者が無議決権株式を相続することで、議決権の拡散防止、後継者の会社支配権の維持が可能となり、円滑な事業承継につながると期待されている。



中小企業で現実に導入見込まれる3類型で取扱い

 平成19年度の税制改正大綱に盛り込まれた3類型の種類株式の評価方法が、中小企業庁から国税庁への事前照会で明確化することとなった。
 会社法施行で様々な種類株式の発行が可能となったが、中小企業の事業承継等で実質的に活用が想定されるのは、現段階では、@配当優先の無議決権株式、A社債類似株式、B拒否権付株式の3類型であると整理されたことで、これらの相続税上の評価に限定して今回の事前照会が行われた。 中小企業庁では、例年、財産評価基本通達の改正などが行われる時期よりなるべく早く、これらの評価方法を明確化する必要があるとして、事前照会によって取扱いの確認を求めることとなったようだ。昨年12月の政府税制調査会の税制改正への答申でも、「議決権のない株式等の種類株式に係る評価の明確化といあった当面構ずべき措置については適切に対応すること」とされていた。


これまでの評価方法 19年分相続等から適用される評価方法
@配当優先の無  議決権株式 普通株式と同様の評価(議決権の有無は評価上考慮されない) 普通株式と同様の評価が原則。ただし、議決権がない点を考慮し、納税者の選択で5%評価減し、その評価減した分を議決権株式に加算する評価が可能
A社債類似株式 原則として発行価額で評価(既経過利息に相当する配当金の加算は行わない)
B拒否権付株式 普通株式と同様に評価(拒否権は考慮しない)



議決権無し5%評価減し議決権有り普通株に加算

 配当優先の無議決権株式については、納税者の選択により、純資産価額方式等の原則的評価による評価額から、評価額×5%を控除した金額で評価できる調整計算が認められる。ただし、相続人全体の株式評価額が不変であることが前提となるため、控除された金額は議決権のある普通株式に加算されることとなる。
 この調整計算をするには株式を取得した同族株主全員の同意が条件とされるため、申告期限までに株式について遺産分割協議が確定していること、「無議決権株式の評価の取扱いに係る選択届出書」を提出していること、「取引相場のない株式の評価明細書」に調整計算による評価額の算定経緯を記した書面を添付することが必要となる。
 社債類似株式については一定の条件を満たすものを発行価額で評価、拒否権付株式は、配当が多いわけでも、純資産が高くなるわけでもないので、拒否権は考慮せず普通株式として評価されるとしている。
 なお、今回の評価方法は、19年1月1日以降の相続等で同族株主が株式を取得した場合の評価上の取扱いということになる。


新たな種類株式の活用進めばさらに評価方法明確化も

 評価減が5%とされた背景には、普通株式と比べて議決権のみがない無議決権株式の発行価額が決定されるに際し、海外で上場されている普通株式と無議決権株式の流通格差を参考にしている例などがあるからのようだ。
 実際に国内の上場会社で無議決権株式が発行された際には5%のディスカウントがされた事例もあるところで、この5%は一種の割り切りということだ。
 今回の3類型の種類株式は、あくまでも中小企業が現実に活用できそうなものに限定して取扱いの明確化が要望されたものだが、中小企業庁では、原則的評価方法や今回の3類型の種類株式を組み合わせたものなどで、適正な時価が得られない種類株式が活用されるようになった場合には、さらにその評価方法の明確化を求めたいとしている。


(以上参考;週刊「税務通信」第2960号)
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