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                                               2007年4月18日

改正法人税通達は会社法対応等で見直しは広範囲に


  措置法通達では政策税制関連の見直しも   

  既報のとおり、3月22日、法人税基本通達等の一部改正が公表された。
 今回の改正は、平成18年度の法人税関係法令の改正に対応したもので、このうち、M&Aに関する基本通達の改正では、特殊支配同族会社の業務主宰役員の損金不参入制度、同族会社の留保金課税制度の改正のほか、会社法に対応して、事業年度、資本、配当、組織再編、有価証券、等の取扱いの見直しが行われている。

会社法関係


 18年度の税制改正では、18年5月の会社法施行に対応した法人税関係法令の改正が行われた。確定決算主義をとる現行の法人税制では、会社法の影響は多岐に渡り、今回の通達改正においても、字句の改正から、実質的な改正事項まで広範囲に見直しが行われている。

組織変更等・清算・組織再編等に係る事業年度の取扱いを明確化

 まず、事業年度関係では、法人の事業年度は、その法人の組織は種類の変更によっては、区分されず継続することが明らかとされている(其通1−2−2)。従前の取扱いは、有限会社から株式会社等、旧商法での組織変更を前提としていたが、今回の改正では、会社法に対応して、持分会社から株式会社、株式会社から持分会社、あるいは、合名・合資・合同会社の持分会社の種類変更の場合の事業年度の変更の取扱いを規定した。
 併せて、特例有限会社から持ち株会社への「商号変更」の場合も、事業年度は継続する旨が明らかにされている。
 次に本誌既報のとおり、株式会社が解散し清算する場合の事業年度は、会社法上の「清算事務年度」となる点が通達でも明確化された(其通1−2−7)。
 また、会社法で合併等の効力発生日が明確化されたことに伴って、「合併の日」は、吸収合併の場合には、合併の効力発生日に、新設合併の場合には新設合併法人の設立登記の日となる旨が明らかにされた(其通1−2−3)。
 この点に関しては、組織再編に際して、被合併法人等の資産・負債が合併法人等へ移転する日の取扱いも見直しがなされており(其通1−4−1)、新設合併や新設分割においては、従来と異なり、被合併法人等の側で、みなし事業年度が発生するケースが生じるのは既にお知らせしたとおりだ。
 なお、これに併せて合併等の日から新設合併法人等の設立の日の前日までの期間に生じた損益は、設立後最初事業年度に取り込む旨の取扱いは廃止されている(旧其通2−6−2の2)。
 そのほか、有価証券の譲渡損益の計上時期(其通2−1−22)、剰余金の配当等の帰属時期(其通2−1−27)においても、会社法における合併等の効力発生日に対応した改正が行われている。


組織再編では、「1株未満の端数」に係る金銭交付の取扱いに注意

 組織再編関係では、そのほか、合併等に際して、1株未満の株式の譲渡代金を被合併法人等の株主等に交付した場合の取扱いが改められている。
 合併等が適格合併等に該当するためには、被合併法人の株主等に対して交付されるのが、合併法人の株式のみに限られるのであるが、従来から、合併比率の関係等で1株に満たない端数が生じ、その端数部分に相当する金銭を交付を受けた場合には、法人税では、これを被合併法人の株主等に対して、いったん端数に相当する株式が交付された後、金銭で買い取ったとみて金銭交付とはしない取り扱いが設けられていた。
 新通達では、会社法でいわゆる端株制度が廃止されたことに伴って、「1株未満の株式」を「1株未満の端数」とする字句の見直しを行うとともに、「交付された金銭がその交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的にその株主等に対して支払う合併の対価であると認められるときには、その合併の対価として金銭が交付されたものとして取扱う」旨のただし書きが追加された(其通1−4−2)。
 この取扱いは、合併等のほか、18年度税制改正で法人税法本法の組織再編税制に取り込まれた「適格株式交換・適格株式移転」の場合にも適用される。
 また、会社法では、多様な株式の発行が認められたが、いわゆる「取得条件付株式」「全部取得条項付種類株式」「取得条項付新株予約権」に係る株式に1株未満の端数が生じた場合の有価証券の譲渡損益の取扱いにも同様の規定が新設された(其通2−3−1)。
 なお、旧商法における端株制度は、会社法で廃止されたため、18年度の法人税法令の改正で、有価証券に準ずるものの範囲から端株が除外されているのであるが、会社法234条及び235条に規定する「1株に満たない端数」は、株式が端数部分の株主に共有されている状態と解されることから、法令で規定するまでもなく、株式として取扱われることとなる(法令11)。


資本金「0」の会社は「資本金を有しない法人」とは取扱わない旨を明確化

資本等取引関係では、会社法によって、資本金の額は払込金額によることとされたこと等に対応して(旧商法では資本の額は発行価額によるとされていた)、資本金の増加の日に関する規定が改められている(其通1−5−1)。
 また、旧商法293条ノ3で認められていた「準備金の資本組入れ」が行われた場合の資本積立金額の取扱いについては、会社法の制定に伴って「削除」されている(其通1−5−3)。
 なお、周知のとおり、会社法では、会社の資本金が零となる場合がありうることとなったのであるが、これに対応して、新通達では、会社法の規定の適用を受ける法人の資本金が零の場合であっても、資本を有しない法人には該当しないことが留意的に明らかにされている(其通1−5−8)。


有価証券の取得価額は有利発行によって取得した場合の 取扱いに注意

 従来、有利発行によって有価証券を取得した場合には、その有価証券が「株主等として取得をしたもの」である場合には、購入対価を有価証券の取得価額とする取扱いがあったが、会社法では、種類株式の活用によって、有利発行を受ける株主とそうでない株主とを区別することが可能となったため、平成18年度税制改正においては、「株主等として取得したもの」という要件が「当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがない場合」と改められた(法令119@四)。
 そのため、今回の通達改正では、この「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは、有利発行を受ける株主等と異なる種類株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合であることを明らかにした上で、例えば、新株予約権の無償割当てがあった場合には、種類株主総会の決議の有無だけでなく、発行法人の各種類株式の内容、無償割当ての状況等を総合的に勘案して判定する必要がある旨を注書きで示している(其通2−3−8)。


会社法の「剰余金の配当」に対応して受取配当の取扱いを見直し・原資に応じたプロラタ計算にも注意

 配当関係では、会社法によって、剰余金の配当は期中のいつでも何度でもできることとされたことに伴う法令の改正に対応して、効力発生日の取扱い等、所要の整備が図られたほか(其通3−1−1−〜3−1−7の4)、剰余金の配当の取扱いについては、その原資がその他資本剰余金であるかその他利益剰余金であるかによって、プロラタ計算を行うこととされたことに伴い、その他資本剰余金の処分による配当であっても受取配当等の益金不参入規定の適用がある旨の通達が廃止されている(旧其通3−1−7の5)。
 この点、剰余金の配当を行う法人側では、プロラタ計算の結果、配当金額のうち、その他資本剰余金を原資とした部分については、資本の払い戻しとして取扱い、源泉徴収をしないのであるが、配当金額の全額について、源泉徴収を行ってしまう等のミスも生じているようなので留意したい。


DES関連では債務の消減益と欠損金の活用で取扱いを明確化

 また、会社法において、新株発行で増加する資本金の額等は「払込金額」とされたことで、DESに係る債務者側の処理は、従来の債権の「券面額」ではなく「時価」によることとされた。そのため、税務上は、債権者側で債務の消減益が認識されることとなったが、併せて、債務消減益と期限切れ欠損金との相殺が認められた。
 これに伴って、今回の通達改正では、債権を現物出資する一般的なDESのほか、会社更生法等の規定により、@更正債権等が消滅した場合において募集株式の申し込みの上でその募集株式の払込金額の払込をしたものとみなされる場合、A構成債権等の消滅と引換えに株式若しくは新株予約権の発行等を行った場合等には「債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合」に該当するとし、欠損金の損金参入ができることを明らかとしている(其通12−3−6)。


(以上参考;週刊「税務通信」第2960号)
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